コールディとイバラ
ーアルフレッド軍が占拠する西の街上空
アルフレッドが出立の決意をして数時間後の事、じゅうぶんな回復魔法を受けたイバラはなんと背中にコールディを乗せて空を飛んでいた。人間より長命で大人なコールディが、まだ子供のイバラの背にまたがる姿は、軽く虐待であった。
キィイイーーーン!
「イバラちゃん重くないかい?」
「赤鉄化してるから全然重くないよ!」(でも見栄えがヤバイじゃん……)
「城から500ミュートロに馬防柵その後ろに落とし穴、全部メモして行くんだよ!」
「うん分かってるカキカキ……」
言われた通りに地図にメモをしていく魔幼女。恐るべき事にコールディはこの竜の眷属であるイバラの事を、完全に召使いの様に扱い始めていた。それもこれも約束の首輪の死の脅しの結果である。
「……それでイバラちゃんはボスドラゴンの眷属で、銀色の男であるユリナスもシルバー・リリー・ドラゴンの眷属なんだねえ?」
「あ、うん」
イバラの口は急に重くなる。
「おやおやあたしには何でも隠さず教えてくれないと困るねえ」
「で、でも私下っぱだから、知らない事も多くて……」
空の上でイバラの目は泳いだ。
「あははっでもコールディお姉ちゃんに、おいおい教えてくれたら良いんだよぉ?」
直接見る事は出来ないが、彼女の眼光は鋭く恐ろしかった。
「ボスドラゴンって全部で何匹くらいいて、席が空いてる眷属とかってあるのかなあ?」
ドキッ
イバラの胸は激しく脈を打つ。この女にこれ以上、黄金竜にたどり着く秘密を教えて良い物か、激しく迷ってしまう。
「え、う、うん……どうかなあエヘヘ」
グイッ!
飛びながらコールディはイバラの長いツインテールの髪を引っ張った。
「このアタイに隠し立てすると許さないよ!?」
「うわ、やめて……あっっアレ見て!!」
あからさまなゴマカシだが、イバラの指した方を見る。
ガラガラガラ……
もちろん音こそ聞こえないが、街を占拠しているハズの部隊が西側に向けて、輸送部隊の馬車や大八車が列をなして移動していた。半包囲持久戦を行う部隊にはあるまじき行動であった。
「荷駄隊が先頭を行っている、どういう事だい!?」
イバラはうまくごまかせたと思った。
「コールディお姉ちゃん爆撃してみる?」
「いやっ有力情報だよ! これでまたアタシの信用度が上がるねえ。戻るよ!」
「うん」
今度はハンドルの様にイバラの髪を引っ張った。
クイッ
ーゼブランド王城
今、この城には旧西砦から退却した兵を含め、約3万の大軍がひしめき合っていた。イバラは、かつてナスビィーが直接王様に会いに来た時と同じ様に、王様の執務室に飛び込んだ。だがコールディーはめざとくイバラへの虐待が疑われない様に彼女の小さな背中からおりた。
サッ