放浪軍の決意!
ぴくっ
アルフレッド、顔色が変わった。
「敵兵の家族? 修羅のみち……」
「ワシは綺麗事は言わぬ、王家に戦争をするなとは言わんのじゃ。手助けさえしよう、じゃがアルフレッド殿下が誰か敵に弓を引いた時から、いつかはアルジェシュナイジェ王にも刃が向く宿命に入っていたのじゃ、その覚悟を持ちなされい!」
完全に彼の目が覚めた様だ。やはり王子、覚悟はあった様だな。
「リリー師匠さま、僕は……私はこれからどうすれば?」
すっく
血を拭く事も無く、アルフの奴は立ち上がった。
「王子よ、我らは今や放浪軍じゃ」
「放浪軍……」
「だがそなたには守るべき大切な存在が居るのでは無いのかぇ? 我らの東砦にはアウレリアーナ様が王子の帰りを首を長くして待っておろう。アルデ殿はまだ国内を完全掌握しておらぬが、すぐに砦に手を出してくる。我らはそれより先に砦に入るのじゃ!!」
完全にアルフの目が息を吹き返した。
「そうだっ姉上だっ僕には大切な姉上を守る義務があったんだ!」
「そうよ、皆でアウレ様に会いに行きましょうよ」
「うんうん」
レミランとシャリィも王子を支えてくれる。やっぱりこういう時は女の力か。
「王子よ、目覚められた以上即断即決なのじゃ。ゼブランドにもすぐに情報が知れ渡ろう。シンガリはワシとユリナスとアルパダ様が兵一万でつとめるのじゃ、一人でも多くの兵を砦までお連れ下され!」
師匠は気絶したままのアルパダを持ち上げた。
ぐいんっ
師匠もう完全にアルフの奴の軍師じゃないか。俺の存在って……
「師匠さん私の事をお忘れですよ!!」
「ヒイラギちゃん君も逃げる方が」
「嫌です」
即、拒否。俺主人なんだけど。
「そうかならばゴーレム像を忘れるなじゃ」
「ちょっと待ったぁ俺達もユリナスさんに付き合うぜっ! その分特別ボーナス頼むぜ」
普段影が薄いジャラー達……ありがとう。
「分かりました師匠さまありがとう御座います! よし皆聞いたか、我らが目指すは東砦ただ一つ、兵1万を兄上に託し我らは一刻も早くここを引き払うぞっ」
「ハッ!」
信頼のおける家臣達が敬礼する。兵達が逃げずについて来てくれれば良いけど。
ーアルパカイン東砦(旧ゼブランド西砦)
ここにも直接アルデリーゼから情報がもたらされ、内部では動揺が広がっていた。夜には侵入しようとする謎の部隊もあったが、その度にコウモリの一団が現れ撃退していたという。
きゅぴきゅぴきゅぴ
「アルフレッド、早く帰って来るのですわ……」
アウレリアーナ王女は両手を組んで、東の空を見つめた。今の所離脱者はいないが、このままではそれも長くもたないであろう。