師匠の言葉
「アルフレッド、俺は……」
「ユリナスお前は黙れっ! 早く指揮権を俺によこせアルフ、アブッッ!?」
ドシュッどさっ……
俺の事をじゃましようとしたアルパダは、光の速さで当て身をした師匠の前で気を失って倒れた。だが誰も同情しないという。
「お前の見せ場じゃぞ? みごと王子を奮い立たせい」ボソッ
師匠、なぜプレッシャーをかける? 余計に皆の視線が俺に集まる。
「うわーー僕はもうダメだぁーーっ」
ポンッ
俺は泣き叫ぶ王子の肩に手を置いた。
「俺の両親は田舎で元気で健やかに生きている、だからお前の気持ちは根本的には分からないよ」
「……?」
この導入はマズかったか? しかし彼は涙を流しながら俺の言葉の続きを待っている様だ。
「だ、だけど……えーっと、元気だせよ! って言われて元気が出る訳無いよな……そ、そうだっお前にはシャリィやレミランや師匠や俺という仲間がいるじゃないか? 俺達もお前を支えるから皆で頑張ろう!!」
シィ~ン
違うか? スポーツで負けたんじゃ無いんだから、今彼の尊敬する父親が暗殺されたんだから。俺、そんな気持ち全く想像出来ないよ! だって庶民だもん。
「や、やっぱりダメなんだ、怖いんだ僕なんて何の力も無い、兄上に指揮権を渡した方が……」
「ちょ、ちょっと落ち着けよ! な、一旦深呼吸して皆で考えようじゃないか」
ダメだ、俺のスカスカな言葉は彼に全く響かなかった。でもアルフレッドの奴を勇気つけたいって気持ちは本物なのに歯がゆいよ。
「ユリナスさま……」
どうやらヒイラギちゃんだけが俺の真意を分かってくれてるみたい。
ズイッ
すると突然師匠が俺を押しのけて再び出て来た。
「どくのじゃ」
「……?」
師匠の声に反応して、涙だらけの情けない顔で見上げる王子。鼻水を拭けよ。
「こぉんのぉ甘ったれんなじゃーーーーーっ!!」
ドギャッ!!
「うぶおっ!?」
今度はいきなり光の速さでアルフレッドを綺麗なおみ足で蹴り飛ばした師匠は、大声で叫んだ。
ゴロゴロゴロゴロ、ドギャッ!!
アルフの奴は商家のカーペットの上を転がり、最後は装飾された木の壁に激突して止まった。あまりの衝撃にレミランは両手で顔を押さえている。ちょっとやり過ぎでしょ!?
「り、りゅーりゅーししゅーしゃま?」
うわ、イケメン勇者顔のアルフレッドは今度は血だらけに。涙と血が混じってメチャクチャな表情だよ。
「貴様さっきから何を甘えた事を言うておるのじゃ!? そなた軍の総大将として他国を攻めたのじゃろうが? 敵国の兵士が一人死ねばその家族は一人の家族を失う、そんな覚悟も何も無しに全軍を指揮しておったのかーっ! そなたはもはや後戻り出来ぬ修羅の路に入っておるのじゃ」