ネモフィラわけみたまb
「そうして今に至るのさ」
じゃあ。
「君はネモフィラさんって事? それで500年ずっとリリー師匠を陰ながらコソッと見守ってたんだ」
「言い方が引っ掛かるがそうだ。だが彼女には絶対に言わないでくれ」
「でも、でもそれなら黄金竜のワケミタマはどこに行ってしまったんだ? 君がずっと監視し続けると決意した、黄金竜の別体はどこに行ってしまったんだよ!?」
何故かビスマスは困った顔をした。
「それは知らんで良い。だが安全に監視している」
「だったら俺も協力するよ、二人でそのワケミタマ体とやらを倒しに行こうよ!」
さらに彼女が困った顔をする。
「お前は特に黄金竜のワケミタマの事は考えんで良い! この500年、安全に彼女の事を管理して来た。これからも同じ様にやって行くだけだ」
彼女?
「まだ気になる事があるぞ、前に出て来た巨大なネモフィラさん、アレは何だ!?」
「あれは黄金竜のワケミタマの見ている夢みたいな物だ。あたしは黄金竜にずっと無害な者、例えばあたしの親のブルー・ネモフィラー・ドラゴンである、みたいな洗脳を掛けている。彼女は何も知らず500年ずっと夢を見続けているのさ」
また彼女って。凄く気になるよ……黄金竜も女なのか? でも聞いても教えてくれないんだろうな。
「分かった俺も男だ! 今日聞いた事は師匠には絶対言わない。だけど一緒にアルフレッドの元に戻ってくれないか?」
ビスマスいや、ネモフィラのワケミタマはゆっくり首を振った。
「子供のお前には分かるまい。あたしはリリーを愛しているが、一緒に居ると息が詰まるのさ。だから遠くから見守っているのが性に合っている。アルデへの加勢は本気では無いが、ある程度軌道に乗るまでは面倒見る気だ。お前が挑んでくればそれなりに相手しよう。今日はもう帰れ!」
つまり聞く耳持たずって事か、師匠と一緒で強情だよ。
ぴっ
彼女は手を振った。
「嫌がってもまた会いに来るからな!」
ドシューーッ!
俺は未練たらたらでアルフレッドの元に帰った。
スタッ!
俺がアルフレッドが宿泊している商家の館に戻ると、師匠を中心に大変な騒ぎになっていた。
「もーー終わりだっ! 僕はもう父上無しでは生きていけない、もう何も出来ないし考えられないよ」
「しっかりしろ、テメーがしないなら俺が親父の仇を討つぜ!」
師匠の見聞きした事を知り泣き叫ぶアルフに、怒り狂うアルパダ。シャリィもレミランも手の付けられない状況になっていた。
「おうユリナス戻って来たのじゃな!」
「一体どうするんだよ」
俺が勇気づける場面か? でも俺なんて何て言えば良いか。