ビスマスの正体……
「おいお前! アルジェ王は殺されたのか、それともどこかで生きておるのか?」
師匠は鮮やかなくらいに自称新王を無視し、警備兵に睨まれる家臣に指を指した。
「いえ……あの」
チラリとアルデの顔色をうかがう。
「私に構うな良い良い、真実を言え」
「は、はいあえない最期を遂げられ……くっ」
「情けない、見ておっただけか」
サッ
アルデが腕を上げた。
「美貌の貴方は是非お仲間にしたい、しかし歯向かえば貴方でもどうなるか分かりますな!」
カッコ良くビスマスに指示したアルデだが、その彼女は冷や汗を流して首を横にふる。
「こ、こら余計な事をして刺激するな!」
「どうした、リリー殿は強いとは言え普通の女性、それ程君が恐れる必要があるのか」
「違う! 本当に余計な刺激を与えるな、彼女の気まぐれであたし達は生きてる様な物だっ! 彼女が本気になれば城ごと一瞬で吹き飛ぶぞっ」
アルデはビスマスの慌てぶりに首をかしげた。
「何を言っている?」(それ程までに強いのか、そんな人間がいるのか!?)
しかしリリーはふっと笑った。
「安心せい、今のワシはユリナスの無事以外、世の何にも興味は無いわ!」
シュインッ
言い残して消えた。
「見逃してくれたか、はぁ……フゥフゥ。彼女相当怒っていた、ヤバかったぞ」
「……ビスマス?」
ビスマスの冷や汗は尋常では無かった。
「来たっ!」
だがすぐにビスマスは何かを感じて大窓を見た。
「何が来たんだ?」
「銀色の男だっ行って来る!」
「お、おい!」
シュバーーッ
ビスマスも飛び出した。
「ビスマスーーーッ! どうしてだーーーっ!!」
俺はとにかくビスマスを問い質したくて、城にまで飛んだ。
「落ち着けっ!」
ビスマス、出て来たか。
「どうしてだっ、何故アルデリーゼのクーデターなんかに加担した? 本当に王様をヤッたのか??」
「何を言っている? お前はいつからアルジェ王のファンになった? お前はそもそもカピパラの騎士見習いでアルパカにはどちらかと言えば敵対していたハズだが」
そ、そうだけど。
「で、でも王はアルフの大切な父親だっ!」
「お前は見た直近の者に取りあえず感情移入するのか?」
ぐっ。
「しかし君程の者が何故、どうして反乱に加わる!?」
「落ち着け。あたしは人間の殺し合いになど1ミルも興味は無い。ただただ黄金竜の復活を阻止するだけ。アルパカの勢力を二つに割れば、それだけ黄金竜が兵器に使われる可能性が下がるだけだ」
そんな理由で?
「しかし君は人間じゃ無いみたいな言い方だな!」
「ああ、あたしは人間では無いが」
えっ人間じゃ無いって何だよ?