第二王子アルデリーゼ・クーデター、詳報a
「窓口お姉さん、どうしてここに!?」
何か探っているって、この事か。アルフレッドは金持ちの道楽でBランク冒険者をしていて、それで俺達は出会った訳だけど、当然彼も彼女の事は知っている。
「確か、カピパララインのギルド窓口にいた人ですね」
覚えてて話が早い。
「ワシもこの顔は知っておる。何かとユリナスの世話を焼く女じゃが、殿下話を聞いてよろしいか?」
「師匠さまも見知った方ならば、一応聞いてみましょう」
でものほほんとしてる窓口お姉さんの顔は珍しく曇った。
「私もその騎士の方達も王子殿下やユリナスさんを頼って決死の思いで駆け付けました。全て私の情報屋のメイドさんが見聞きした事実です……ですが王子には辛い話となりますが」
決死の思い?
「良いよ、まずは詳しく話してくれ、その上で真偽を判断するよ」
ー数日前
ビスマスがイバラ探索をあきらめ、アルパカルカ城に飛んで戻って数時間後の事に御座います。
「うむ、そうかアルフレッドは良くやっておるようだな」
第三王子の西砦占拠に気を良くした王様は、ご自分が軍の指揮をしている気分で、連日大広間に家臣を集め報せを待っていたんです。そんな時……
ドォドーーン! ドンドン!!
突然大広間にも響く轟音が。
「何事か?」
血相を変えた家臣が走って来ました。
「そ、それが我が国とドルフィンナーゼ国境に居るハズの国境警備兵五千が、何故か突然アルパカルカに現れ、要所を急襲しております!!」
それは軍の明らかなクーデターでした。アルパカインゼット王国全軍で約10万として、その内6万がゼブランド攻略に向かっていました。けれど残り4万と言ってもそれは街中や農村にいる若者や一般人や各地の警備兵をかき集めての事、つまりドルフィンとの国境警備兵五千はその時一番大きな兵力だったんです。
「ほほぅ手はずが良いではないか!」
王様は他人事の様にヒゲを触って感心しました。
ドッカァッ!
と、その時突然大広間のドアが吹き飛びました。そしてツカツカとアルデリーゼ第二王子が先頭を歩き、その横には……蒼い女ビスマスが続き、ドアの後ろの廊下には倒れる騎士達の姿がありました。
「アルデリーゼさま?」
「謹慎中では?」
ザワッ
大広間に居た貴族や家臣達はすぐに眉をひそめます。
「お父上、ご健勝で何よりです!」
第二王子は大袈裟に腕を広げ、ひざまずきました。
「ふむ、それが噂の蒼い女か? どれ仮面を取ってみい、命令だ」
王様は豪胆にもアルデリーゼ様を無視して、ビスマスさんに命令しました。
『ビスマス、何でビスマスがいるんだよ!?』
『邪魔するで無い、最後まで聞くのじゃ』
「これでよろしいかな?」
パカッ
ビスマスさんは簡単にマスクを外しました。
「ふむぅう、確かにドルフィンナーゼの聖女と同じ顔をしておる、これは奇なる事だ!」
王様は第二王子そっちのけで珍しがり、遂に王子がキレられたのです。