真・悪との出会いb 隷従契約
ーその下の街並み
戦闘から逃亡したコールディは味方達が死闘を繰り広げる中、人知れず無人の建物内で息を潜めて隠れていた。そんな時だった。
ドォーーーーン!!
彼女の近くに軽い衝撃が。
「ちっ攻城魔法かい? 位置替えだよ」
と、ブツブツ言いながら警戒しつつ外に出た時だった。
「うっくっ痛いよぉ、助けてよ……うっ死にたく無いよ」
「こ、こいつはさっきの赤い幼女!?」
コールディの眼前に全身ズタズタになったイバラが落下して来たのだった。そして空の上では激しく闘うビスマスとユリナスの姿が。
「お、お姉さん、回復魔法、回復魔法ちょうだい、でないと死んじゃう、ハッハッ」
「息が小刻みに……血圧も高そうだ、もうじき死ぬね」
コールディは冷たく言い放った。
「い、いや死にたくない、助けて……何でも言う事聞くから、貴方の奴隷に、なるよ」
イバラは死にかけの体で必死に哀願する。
チャリッ
その時偶然コールディの指にルウィナの形見の約束の首輪が当った。
「本当に、あたしの奴隷になるんだね? 約束の首輪よ、彼女の背きし時に死の眠りを与えよ」
カシャッ
コールディは死にかけで震えるイバラの首に光る首輪を掛けた。
「? ナニ……これ?」
「約束だよ、はぁあああああっ秘儀っ反魂湧水の舞!!」
キィイイインッ!
コールディの魔法武術の回復の秘儀が始まった。完全復活は無理でもこれで死は免れるだろう。
ーアルフレッドの陣
彼の周囲の敵はすっかりリリーに掃討され、敵軍は綺麗に引いていった。
ビシッ!
「何をやっておるんじゃ、あやつら遊んでおるのか?」
「何故ビスマスさんと鎧の人が戦っているの?」
余裕が出て来た彼らは空を見上げていた。
「報告、敵あらかた城に退去した模様、アルパダ様ご無事に確保しました。先陣の軍、損害多数! 健在なのは五千程にて!」
シィーン
2万いたアルパダ軍で無事なのは五千になっていた。ほぼ全滅である。アルフレッドの軍は3万5千、併せて4万。それに対して、ゼブランド王城には今引いた敵を合わせ約3万あまりの兵が居た。怪我人も多数で、今すぐ城攻め出来る状況では無くなっていた。
「殿下よ、城攻めには約三倍の兵力が必要と言いますのじゃ」
「師匠よ分かっています。ったく鎧の人は何を!」
攻める訳にも行かず、引く訳にも行かずアルパカ軍は停滞した。
「アルフレッド、王様にお伺いをたてた方が」
「一旦我らの東砦に引くにしても、後ろから攻めたてられるのじゃ」
「分かっております」
「引くならばワシがしんがりを務めますのじゃ」
「……」
元々優柔不断なアルフレッドが、ここに来ていつもの感じに戻ってしまった。
「おーーい俺様だっ生きていたぜっ!」
「要らん時に帰って来たのじゃ」