表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/520

旅立ち!


「もう離せ~暑苦しいわ!」

「あっスイマセン」


 師匠が怒りだしちゃダメなので俺は手を放した。

 パッ


「そんなに行きたいのじゃな?」


 多分見た目と違ってお年寄りな師匠は、ずっと俺に身の回りの世話をさせようと……なんか悪い気もするけど、1年もダンジョンの中にいるとやっぱり外の世界に帰りたい訳で。


「はいー外に帰りたいです」


 鬼の様に強い師匠だけど、あからさまに寂しそうな顔をしている。介護の当てが逃げる訳だしな。


 ーユリナスはシルバー・リリー・ドラゴンの気持ちに全く気付いていないのでございます……



「そうかぁ寂しくなるが仕方が無いのう、ではこの銀のホウキを持って行け!」

「いや、それは重いので良いですー」

「そうか欲の無い奴め」


 師匠は銀のホウキを握り絞めた。

 ギュッ


「出て何をするのじゃ?」

「この国は俺の故郷から遠く、仲間に見捨てられて死ぬ様なミジメな俺の事を誰も知らないので、差し当って旨い物でも食べまくって後は静かに自由に暮らします……」


 出所祝い的な?


「自分でそんな言い方するな~? しかし何とも覇気の無いヤツじゃ~よきよき。そうじゃな……」


 なおも何とか話の糸口を見つけようとする師匠を、俺は笑顔で見た。


「あの、そろそろ帰りたいのですが?」


 完全に年寄りが客を引き留めるパターン! 急に気が変わって食べられる前に早く脱出せねば。



「そ、そうかぁ名残り惜しいのぅ、では出口はアッチじゃ?」

 

 師匠は女性形態の綺麗な指先を、俺が最初に殺された扉に向けた。


「あのー、扉からちょっと遠ざかると途端に強いモンスターに殺される訳ですが」

「おおそうじゃな! ではワシの部屋に出入り自由な秘密の抜け道を教えてやろう。それと適当な鎧と剣も持って行け」


 ワザとだっ絶対引き留めようとしてる! もしかして師匠いじらしくて可愛いのか? いや~でも一回殺された訳だけど……それに死体の鎧や剣もらうって追い剥ぎみたいだなあ。


 カチャッ

 しかし俺は師匠に言われる通り、ちゃっかり一番高そうな鎧と剣を受け取った。ま、回復師だから見掛け倒しだけど。


「ありがとうございます、必ずや里帰りしますよ!」


 多分一回くらいは……


「そうかぁ~~達者で暮らせよ」


 何故か師匠の顔は悲しそうに見えた訳で……でも俺は一切気にせずに抜け道を出た!!


 ザッザザッザ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ