重い報告……a
ー第三曲輪
「だからだなーお前の裏切りは偶然の結果で」
「いや裏切りの裏切りだから裏切りでは無い!」
「いや裏切りの裏切りも裏切りだろが!?」
「お前らもう付き合えよ……」
師匠先に帰るなんてヒドイよ。俺は三角座りしながらひたすら続くゴブルラと大きなゴブリン男の言い合いに付き合わされていた。ゴブルラ見た目には元気じゃないか!
「スーッ」
「あう?」
うっヒイラギちゃん俺にもたれかかって寝るなよ……でも可愛い。
ーアルパカインゼット王国アルパカルカ城、アルデリーゼの謹慎部屋
カタッ
とうに家臣の訪問時間も終わり、寝るだけになった第二王子の部屋の窓が鳴った。高い塔城の9階にある彼の部屋の窓は、普段からカギを掛けていない。彼の窓は逃走しない様に普段から監視されており、その監視をかいくぐれる人物は限られていた。
「入ってくれ」
寝たままのアルデリーゼがひとこと言うと、外から窓は開けられ暗がりから闇に同化する蒼い女が遠慮無く入って来た。ビスマスであった。
「もう君が戻って来てくれたのか。グズのアルフレッドの事だ、砦攻めの前に里心が出て引き返して来たか?」
「いやゼブランド西砦なら半日で落ちた」
ビスマスは事も無げに言った。
ガバッ!
アルデリーゼは毛布を吹き飛ばして起き上がる。
「何!? あの西砦が半日で落ちただと!? アルパダが先陣か……」
アルデリーゼにとっては青天の霹靂だった。彼が父王に黙って無断で何度となく攻めあぐねた砦が、無能と思っていた弟にアッサリ落とされたのである。
「いやアルパダは後方で様子をうかがっていただけだ。あたしが参陣している上に、前に邪魔をして来た銀色の男まで加わっているんだ。さらにお前がちょっかいを出した銀竜村のゴブリン傭兵共が、砦の内部で反乱を起こした。これで敵は大混乱になり、アルフレッドの和義にあっさり応じたのさ。夜にも関わらず第三王子を称える声で王都は大騒ぎだ」
アルデは呆然の顔をした。
(ぜ、全然知らなかった、謹慎してたら世の中の動きが本当に全然分からない物だ!)
「安心しろ、明日の昼には家臣の訪問時に教えてもらえるだろうハハハ」
「で、今後の予定は?」
「はっきりとした事は分からんが、アルパダは早く進撃したい様だな。この辺はまだ探って無いので確定的な事は分からん。いよいよ動く気か?」
ビスマスは探りを入れる様に聞いた。
「いや、まだだ。はっきりともっと戦線が伸びきるまでだっ! だがしかし我が有能な弟に感謝するしかないな、その時は君に来てもらわないと話が進まない」
「金を積まれた分だけは働くさ」
「君は本当に金の為に動いているのかね? 本当は金なんて要らず、何か他の目的があるのでは無いのかね?」




