ル、ルウィナ……? 後編a
実はユリナスこと【監視兵対策くん一号改(β)戦闘仕様】は死んでいる訳では無く、推しぬいモードに戻す事を忘れた師匠のお陰で、スリープモードで休息しているだけであった。しかしその状態は何も知らないラベリン(ルウィナ)とレイラ(コールディ)にとっては、死んでいる様に見えた。
スースー
しかしコールディは彼の口がかすかに開いている事に気付く。
「ちょっと見なよ、ユリナスは息をしているよ。こいつ生きてる!」
「ほんとだ、仮死状態か何かなのか?」
二人とも小声で話すが、目の前のユリナスは一切反応しない。
ブンブン
遂にルウィナは対策くんの眼球の前で手を振り出した。
「やめなよ!」
「大丈夫さ、こいつは気絶してるかシビレ魔法か何か撃たれたか……」
二人して顔を見合わせる。
「……殺るかい?」
「ダメだっ! 第三王子始め、多くの人間が俺達が部屋に入るのを見ている、真っ先に疑われるよ。それにこの部屋にまだ仲間が潜んでるかも知れない」
二人して振り返る。
「あ、お邪魔してまーす?」
あわててアイサツしてみたが、何の反応も無い。
「コールディいやレイラ、他に誰かいないか他の部屋も探して来てくれ! 気を付けてな」
「あいよ」
部屋と言っても一部屋では無く、将軍用の貴賓室の一つでバスルームやクローゼットや洗面所など複数の小部屋で成り立っていた。そこに誰か潜んでいないかコールディが探りを入れ始める。
パタッカチャッギイッ
「誰かいませんか~?」
テントそっちのけであちこち家探しし始めたコールディだが、ルウィナはまだ対策くんをじっとにらんでいた。
チャリン!
何気なく腰に下げた首輪に手が当る。それで彼はハッとした。
「そうだ、この【約束の首輪】をこいつに付けりゃあ、こいつの異常な強さの秘密を聞き出したり、こいつ自身を下僕として使役出来るんじゃないか!? だとすりゃあこのアルパカイン王国でコイツを使って成り上がれるぜ! そうして不要になりゃ自害させれば良い……ヒヒヒ」
カシャッ
ルウィナはコールディに相談する事無く、約束の首輪を展開して対策くんの後ろからゆっくりと近付ける。
どっくどっく
彼の心臓は緊張と興奮で高鳴っていた。
「約束の首輪よ、汝の力でこの者の背きし時に死の眠りを与えたまえ!」
キュイィーーーン!
約束の首輪がにぶく光り始める。あともう少し、もう少しで対策くんの首に首輪を掛けられそうな時だった。
ビカッ!
対策くんの目が光った。しかし後ろに立つルウィナにはそれは気付かない。
「ダレ?」
「うっ起きたか? ええい良いわっ」
カッシャッ……
強引に首輪を掛けようとした時だった。
「フシンシャ!」
「!?」




