ゴブルラの不満……
「イバラと戦ってくれるのですか?」
「ケースバイケースじゃ、一般兵にでも手を出せば応戦するがでなければ放置するのじゃ。オヌシの力で倒すが良いぞ」
え、普段どうでも良い事で大甘なのに、なんで急に真面目な武道の師匠ぽい事言い出すの、逆で良くない!?
「は、はい分かりましたお師匠さま」
武道の弟子っぽく返事しておこう。
「そんな事より、ユリナスよ本当に反旗をひるがえすのか?」
「大声で言わないでゴブルラ、その通りだよ!」
「……」
ゴブルラは不満顔のままスタスタと歩いて行った。
「お、おいゴブルラ失礼だぞ! もう決まった事だぞっ」
「おいアイツ大丈夫か、情報漏らしたりしないか?」
「口封じだっ」
「やめろって、ゴブルラが皆を危険にさらす様な事する訳無いよ」
大丈夫だよね~? そうやってゴブリン傭兵の集会は終わった。各々が家路につく中、ヒイラギちゃんが俺の目の前で突然泣き出した。
ポロポロ
可愛い顔が歪み、大粒の涙が落ちて行く。それを師匠はジトッとした目で無言で見ている。
「うっうっっ」
「ど、どうしたの?」
ヒイラギは声を絞り出す様に答えた。
「申し訳ありません! 誇り高きユリナス様があんな外道の様な裏切り策をなさるなんて」
俺そんな誇り高きないぞ! どちらかと言えば誇り低き方だぞ。
「一部言葉に引っ掛かる部分はあるけど何でそんな事で君が泣いてるのさ、泣かないでよ!」
「もともとユリナス様はアルパカインなんていつでも抜け出してやるとおっしゃっていました、それが我が兄があの様な事になって……もう放置すると言いながら、実は兄の事を心配なさってアルパカに留まる事にされたのでは? うっうっ」
そんな風に考えていたのか、可愛いなあ。というか真面目だなあ。
「あはは真面目に考え過ぎだよ~。師匠なんて貴族用食堂に入り浸って、無尽蔵に美味しい物が出て来るのじゃ~とか言ってるし、俺も文句言ってても快適なアルパカの貴族さまの生活が手放せ無くなっただけだよ」
「何気にワシをバカにしとらんか?」
「でも……」
「バカだなあアジサイ君を心配するとしたら、それは好きなヒイラギちゃんの兄だからじゃないか」ボソッ
泣いていたヒイラギの顔が一瞬にしてハッとなった。
「あっ」
「うっ」
し、しまった。話の流れで絶対に口にしないと決めていた事を、ついポロッと世間に公表してしまった!! これじゃあ権力で部下に手を出しちゃうセクハラ上司だよ~、でも今小さい声で言ってたし聞こえて無かったって事無いかなあ? 全力でゴマカしてみよう!
「あ、そ、そそそうだっ今日の夕ご飯どんなのにするかなあ~?」
「へっあっ、うっそうですね」
カーッ
ヒイラギちゃんの顔がみるみる真っ赤になって行く。
「き、聞こえてた?」
「聞こえてませんっ! わた私、すすす少し向こうに行っておきます」




