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引っ越す?


 ーマリのアクセサリーショップ


「……という訳で、その後はファニーとは会えずじまいで、騎士叙任式の日取りは追って伝えるから、しばし宿に帰って下さいと言われたよ」


 何故かマリが薄ら笑った。あー信じてないなコイツ。


「ふぇー良かったじゃない?」

「君がそんな感じの言い方すると妄想してたよ!」

「やめてよ気持ち悪い。貴方の脳内で私の姿を使用しないで」

「え?」


 意味が良く分からないよ。



「しかし我が銀竜の洞窟に近い村を所望するなぞ見直したぞユリナス」


 え、見下げる部分ってあった?


「うん、きっとその領地には立派なお屋敷かお城があって、そこに移り住む事になると思うんだ」

「へェ~良かったじゃない?」

「それ二回目だよ」

「だってそれしか感想が無いし」


 俺は真顔になった。


「マリごめん、きっとこれから君と俺と師匠の3人でわいわいきゃあきゃあ言いながら、面白おかしく暮らして行くと期待してたと思うのに、いきなり引っ越す事になってしまってほんとゴメン」


 するとマリはなんとも微妙な顔になった。なんで?


「いやそんな事ないから、心置き無く引っ越しして。貴方の栄転を心からお祝いするわっ!」


 喜んでいいの? まあ出会って一日二日で泣いて別れる訳も無いか~。



「ワシも付いて行って良いのじゃな?」


「当たり前じゃないかっ俺も師匠が居れば心強いし。けど二人で馬を並べて領地に赴任したら、多分師匠の見た目な感じ、ちょっと年上の美人な許嫁と思われちゃうかも知れないけどごめんね」


「い、許嫁ぐはっ!? はぁはぁ」


 突然師匠は心臓を押さえて苦しみ出した。


「師匠どうしたの!?」

「ちょっと動悸がドキドキしての」


 そうか師匠見た目は若いけど何百年も生きてるお年寄り、いたわらないと……俺は師匠の背中を撫でた。


「貴方が痛めつけてる様に見えるけど」

「え、何で!?」

「いや、マリはなかなかワシの話を良く聞いてくれて、良い茶飲み友達になれそうじゃ!」


 おっそうなんだ。けどマリの顔は血の気が引いてる気が。


「それは無いわ! なるべく早く出て行ってね」

「恥ずかしがらぬで良いぞ」


 きっとマリも気恥ずかしいのだろうな。お年寄りに茶飲み友達と言われたらそりゃ。



 コンコン

 マリに何か言おうとしたら、突然ノックが。こんな夜分に誰だろと3人で顔を見合わせる。最も師匠も銀化した俺も強いから泥棒とかなんだとかは一切心配してないが。


「誰でしょうか?」


 マリが店先のドアから聞いた。何かあれば当然俺達が飛び出す事になる。


「大きな声では言えんがわらわじゃ。早う開けい!」


 うは、完全にファニーの声だよ。俺は飛び出てドアを開けた。ファニーの横にはお付きが数人いたが、すぐに退散する。

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