はい解散!
と、和やかな雰囲気の中、突然ツカツカと歩き出したフレエル王女がヒイラギちゃんから鏡を奪い返した。
しゅばっ
「この鏡はわたくしの物ですからっ! いつの間に取ったんですか、この鏡は誰にも渡しませんからっ!!」
いつもホンワリしている王女さんにしては多少険しい顔をしていた。そのあまりの豹変ぶりに皆一瞬あっけにとられる。きっとヒイラギちゃんが無暗に取ったりする訳無いよ。
「王女さんこれにはきっと何か訳が」
「訳なんてありません! 私が冒険者の早業で勝手に借りてしまいましたっすいません」
ぺこり
彼女は深々と頭を下げた。いや俺の立場は!?
「おい鏡、お前何か知ってるんだろ?」
『スーーン、私なるべく男とは話したく無いのです』
こいつ。
「あのー永遠のライバルである王女殿下が帰られたので、そろそろわたくしもお城に帰りたいのですが」
王女さんがポシェットに国宝鏡をしまいつつ、つぶやいた。
「おおっそれなら私が子コウモリモードの大群でお連れしましょう!」
「あ、大丈夫です」(気持ち悪いです)
「ならば歩いて帰れば良いのじゃ」
師匠王女さんに何故か冷たいな。
「安心して、王女さんは俺がお連れするよ。ヒイラギちゃんそんな訳でお兄さん解放出来なくてごめんよ」
「そんな! あんな兄の為にここまでして頂いて」
彼女の目が再びうるみ始める。
「大丈夫だよ! 俺もう少しこの城に居る事にするし、ゼブランド攻めまでまだ一か月半もあるし、なんとかするよ」
「ユリナスさま……」
思わず見つめ合う俺達。
「あーフィアンセの前で良い根性をしておるのじゃ」
「あの~早く帰りたいですー」
「ついでに私も結構傷心です」
カーミラーはアウレリアーナが床に叩き付けた手紙をひろい直した。こうして俺はお姫さんをお姫様抱っこにして【ウサミミとワニに囲まれし小さき王国】に連れ帰した。何だかんだ言って、このお姫さんの力が無かったらアジサイ君を解放出来なかった訳で。あ、解放したけど自分で戻って行ったんだっけ。
ー次の日
昼食の場で俺は師匠とヒイラギちゃんに言った。
「ふぅ……凄く気が重いんだけど、これからゼブランド西の砦に行って、エーリュク君達にアルパカインゼット王国のゼブランド王国侵攻の情報漏洩して来るよ!」
ヒイラギが目をぱちくりさせる。
「物凄い発表じゃな!」
「もう本当に工作員ですね」
「だから気が重いんだ!」
「じゃあ行かねば良いのじゃ~」
「そんな訳にはいかないよ、これからどんどん軍団の陣立てとか細かい情報を伝えて行くんだ」
「ごくりっそこまでするんですか? アルフレッド様は大丈夫ですか」




