鏡の声とヒイラギの願い
「兄さん……?」
ガチャリッ
ヒイラギちゃんは呆然として二人を見送る。俺達は、はかなげなそんな彼女を見守る事しか出来ない。
パキッ
ーその時奇妙な音が鳴ったので御座います。
「兄さん……兄さんのバカ! ってアレ??」
ヒイラギが、ふと出口でピタッと止まったままの兄と、アウレリアーナ王女の姿を不審に思い始めて、辺りをさらに見回した。
「あ、あれっユリナス様っ師匠さまっついでに金髪の王女様にカーミラーさん!? どうして動かないの」
何故かヒイラギを残し世界の全てが止まっていた。
『ふーっふっふっふっ、気付きましたね。とにかく私をポシェットから出して下さいハァハァ』
「鏡さん?」
彼女は言われた通り国宝鏡を取り出した。
『普段はこんな事はしないのですがね、時間の隙間に入り込んで時を止めた様にしています』
「す、凄い、皆本当に止まっているの?」
『止まっているというより、凄く短い一秒のその中の瞬間を長く伸ばしているだけですよ』
「それで一体何の用ですか?」
『さぁ、可憐なメイド少女よそなたの願いを言いなさい』
「願い? 何でもかなうの??」
『そーなんです! 私は実はあらゆる願いを叶える事が出来る、世界改変の力を持つのです!!』
「せかいかいへん?? リリー師匠様より強いのですか?」
『師匠さまとは、そこの古き恐竜の事ですか? 彼女も美しく強いが私の足元にも及びませんねえ。さぁ願いを言うのです。願えば優しい兄さんが笑顔で貴方の元に戻って来る事でしょう!』
「そんな事、きっとリスクがあるに違いない。私の魂を吸うの?」
『まさかっ貴方には何のリスクもありません。ただ私に貯められた魔力が全て失われて、記憶も人格も消えてまた数十年とか百年とか話す事も動く事も出来なくなりますねぇ。その程度です』
「そんなのダメよ! 可哀そう……それにそんな凄い力、兄さん何かの為に使っちゃダメ。もっと平和の為とか人々の為に使うべきよ」
『早くもう時間無いです、本当に良いのですか?』
「うん、もっと良い事に力を使って、それが私の願い」
『君の様な心が綺麗な少女は見た事が無い、人間なら即求婚です! 君の幸福を願いますよ』
「ありがとう鏡さん」
パシィッ!
奇妙な音と共に時間は動き出した。
スタスタ
兄はそのまま遠ざかって行った。
「王女さま申し訳ありません」
「え」
ヒイラギちゃんの両手にはいつのまにか鏡が。
「何ですか?」
「鏡さんありがとうね、チュッ」
ヒイラギはその国宝鏡にキスしてしまう。え、何ナニ?
『おぉこれは天にも昇ります~』
「だから何だよ!!」




