これが王国の、立身出世の魔力か……
こんなに可愛い妹が泣き叫んでもアジサイくん変わらないのか? そんなにアルパカインゼット王国で騎士として立身出世したいものなのかよ。これが王国の魔力なのか……でも確かに俺だってBランク冒険者やAランクになって、より大きな依頼を受けたいっていつも思ってた。人の事は言えないのか?
「ヒイラギちゃん無駄だよ、もう何言ってもアジサイ君の意思は変わらないよ」
「俺はもうカールとして生きて行きます」
「でも……アルデリーゼの奴は俺達やゼブランドの情報が聞き出せると思って、お前を利用してるだけだからな、お前がいくら一生懸命尽くした所で用済みになったら消されるかもな」
腹が立っていた俺はいくらか冷たく言い放った。
「そ、そんな兄さん聞いたでしょ!? アルデ様は冷酷な方よ、考えを改めて」
「そうだぞっ部下の部隊を見殺しにして自分だけ逃げる奴だからな、どうなっても知らないぞ!」
「部下の部隊を見捨てたとしても、それは仕方が無い事です。上に立つ者として自己が生き残る事が一番の目的になるんです。俺達家臣はその為に命を懸けて仕えるのが当たり前なんですよ!」
俺はコケかけた。
「これは重症なのじゃ~ワシが再洗脳をかけてやろうか?」
「私でも魔法をかける事が出来ますぞ」
「あ、私も~」
師匠とカーミラーとフレエル王女が次々に手を上げる、どんな状態だよ。
「やめてくれ! そんな事するなら、例えリリー師匠様とでも戦いますよっ」
「お前師匠の実力忘れたのかよ! 師匠も皆も止めてくれ、こいつアルデリーゼに裏切られて痛い目みた方がいいよ」
「本望です!」
「兄さんもう最後のチャンスよ、ユリナス様に見限られたら本当に私達お別れなのよ?? ユリナス様はずっと兄さんの事助ける為にこの国に居続けたのよっバカー!」
「ヒイラギ、俺の意思はもう変わらないよ、達者でな。ユリナス様に良く仕えろ!」
「あの~よろしいですかね? わたくしもう帰りたいですわぁ。せっかく助けた男が我が国に仕えたいというならもう工作員も興ざめですわ。今日は私は寝ます……ふぁ~~」
飽きて来たアウレリアーナがあくびをした。もうこれが限界だなと俺達は悟った訳で。
「こ、これは申し訳ありません王女殿下、私がお部屋までエスコート致します、ささっこちらへ」
「あらそう、では皆さんまた面白い物を見せて下さいなうふふ」
もうアジサイ君の目には大切な妹も俺達も映って無かった。ただただ王女様をエスコートするだけの騎士が一人いるだけだ。俺はアジサイ君のこんな姿を見たく無かった。それはヒイラギちゃんも同じ事だろうな。




