ジギスムント遠征隊、フロンティア精神!a
「おおっ良い所に居ました。森の中で迷ったあげく、盗賊に襲われていた所をこの素晴らしいお方達に助けていただいたのです!」
侍女の顔が青ざめる。フレエルは笑顔のままだ。
「お、お姫さま襲われていたですと? お身体は大丈夫なのですか、随伴の家臣達はどうしたのです」
「私を置いて馬車が逃げてしまって」
「何ですって!?」
侍女とフレエル姫の間にビスマスが割って入った。
「君達の会話で日が暮れる。侍女殿、お姫さまの身体には傷一つ無い安心したまえ。それよりもフレエル王女、貴方は急ぐ理由があったのでは無かったかな?」
彼女の言葉でフレエルも侍女も同時にハッとする。
「無事で何よりです。そうですよ、ジギスムント様の遠征隊が出発前に貴方様に必ずご挨拶をすると、出発の刻限が迫っても留まっていらっしゃるのですよ」
「まあっジギスムントったら……分かりました急ぎましょう! お二人様申し訳ありません、今からすぐ出発式がありますので、お二人へのお礼はその後で」
ぺこり
育ちの良いお姫さまが頭を下げる。
「いや良い、我らも参加して良いか?」
「俺も見た過ぎるよ!」
「ええっもちろん大歓迎ですよ!」
「では私も」
お姫さまの快諾により、俺達は第17次遠征隊とやらの出陣式に付き合う事となった。
ーお城東門、第17次遠征隊出発式会場
ここには100人余りの若者を中心とした男女の武装集団が並び立っていた。その中でもひと際目立つ凛々しい黄金の鎧姿の若者が、フレエルの帰還を今か今かと待ちわびている。
「ジギスムント、もう彼女は間に合わないわ」
「エリエル、もう少し待ってくれないかい」
「何だか彼女と別れるのが嫌みたい……やっぱり今でもフレエルの事が、ううっ」
「まだそんな事を?」
何やらその横に立つ美少女とジギスムントの雲行きが怪しい。
「ジギスムントーーッエリエルッ遅れてごめんなさい!」
「おお姫がっ姫がご帰還あそばされたぞっ」
ざわっ
城門からフレエルがメルヘンなドレスのスカートのスソを両手で持ち上げながら走り寄って来る。って俺達無視かよ!?
「良かった。最後にひと目君に再会出来て。これで心おきなく第17次遠征が遂行出来るよ! エリエル、君からも別れの挨拶を」
しかし横に立つフレエルに少し似た美少女の顔は曇ったままだ。
「どうしたのエリエル、奥さんとしてジギスムントを支えて上げて」
そっ
フレエルはエリエルとジギスムントの手を取ってにぎり合わせた。ハッとした顔になったエリエルは、そのままフレエルの手もぎゅっと握り返す。そのまま三人で手を取り合って目を潤ませ、周囲の家臣や侍女達もそれを黙って見守り続けた。
「ってアレは何だよ、俺達そっちのけじゃないかっ」
「ハハハ分かりませんかなあ?」
「何だよサイモンえらそ~に」
ポカッ
いきなりビスマスに殴られた。




