アウレ姉さんの白い肌を狙う妖しいアレ
「お待ちなさい!」
ドキッ
「何でしょうか?」
「それ程心配して下さるなら、貴方がらみ以外で少し不審な出来事があります」
俺達は向き直した。
「どの様な出来事でしょうか?」
「実は……ここ最近、古代フォクスサーラ王国跡地の領地から来たという貴族を名乗る美形の青年が、中庭やバルコニーや城の至る所で湧いた様にふっと出会い再会し、少し会話をするとスーッと気が遠くなって、気付くと自室で寝ているという事があるのです。丁度貴方が部屋に忍んだ時と同じ様な状態です……」
何ですかソレ、めちゃめちゃ妖しい事件じゃないですか! ソッチを先に相談してよ!?
「……あの、その~何かされたりとか服が乱れてるとか?」
「おや、貴方もその様な事を私にしていたのですか?」
「めめめ滅相も無い! 工作員として情報収集だけが目的でしたよハハハ」
ジトッ
窓口お姉さんが俺を不審の目で見る。
「相手は貴族を名乗る紳士、ベッドの上で目が覚めても服には一点の乱れも無いですわ。ただし……」
ごきゅり
「ただし?」
「実は湯あみをしていて気付いた事があるのです」
「ごきゅり、ゆ、湯あみをしていて、何にお気付きに??」
「ユリナスさん呼吸が荒いですよ?」
とうとう窓口お姉さんが突っ込んで来た。
「これを見なさい」
しゅるりっ
アウレ姉さんは後ろを向くと、突然長い髪をかき上げた。細い首に綺麗過ぎるうなじが……何故ドキドキする?
「うっ一体何を見ろと……」
「首筋を見なさい、赤い点々が」
「ギョギョッ王女殿下の頸動脈辺りに赤いポツポツが」
これってアレしか考えられないじゃないですかーっ!
くるり
首筋とうなじを見ていると、突然振り向いて目の前に王女の顔が出現する事に。
「まあこの程度なのですけど」
「うっ王女近いです! しかし分かりました、この俺がその怪しい吸血、いや男を退治致しましょう!」
「キュウ? 今何か言いましたか」
窓口お姉さんが冷や汗を流す。きっとアウレリアーナは珍しい亜人の吸血一族に何回も襲われてる。確か聞いた事あるけど、血を吸われたら吸血鬼の下僕にされてしまうんじゃ無かったっけ? アウレ姉さん大丈夫なのかな、見た目上何の変化も無い様だけどね。
「い、いえ何も」
「先程から何を二人してわたくしの事をモンスターでも見る様な目で見るのです?」
「ブンブンめっそうも御座いません!」
「私も見ておりません、お許しをっ」
「では今日は帰って良いですよ」
「て、そんな話聞いたら夜まで居ますよ!」
俺は思わず叫んでしまった。




