事件が起きない領地だよ
ーそして一日半移動して遂に国境間際のユリナスの領地、下ヴァーグトーアに到着したので御座います。
「まったく道草であるのだが、我が王父上のご命令であるので仕方が無い。これよりユリナス殿の下ヴァーグトーア領に入り、代官にそろって挨拶するぞ。下候殿それで良いな?」
だから変に略すなよっ。
「はい、お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
「ユリナスの領地に入るのが楽しみなのじゃ」
「しかし本当に君は一度死んで、気が付いたら一年経っていたのかね?」
「……はい」
第二王子の質問に俺は適当に返事をした。しかし広大で美しい海岸線が広がり木々が生い茂る、なんて綺麗な領地なんだろう。山側に見えるのはブドウ畑か? これが本当に俺の領地だって言うのか……アルフレッドありがとう、君は嘘は付いてないよ。
「夕焼けが海に沈んで綺麗ですね! こんな所でユリナスさんと暮らせたら……ハッ申し訳ありません」
「ヒイラギ最近わざとらしいのじゃ! 何、自分を売り込んでおるのじゃ」
「売り込んでませんっ!」
師匠とヒイラギ案外仲が良いよな。いや、師匠がヒイラギには心を開いているのか。
「この南に古代フォクスサーラ王国あったのじゃ……懐かしいのぅ」
師匠が遠い目を……何があったんだろう?
「今はどうなっているの?」
「廃墟じゃろう、行った事もないわ」
「師匠さまいつか行きませんか?」
「もう良いのじゃ……」
物憂げな師匠が気になったけど、俺達は代官屋敷に向かった。
ー下領代官屋敷
「第二王子アルデリーゼ、王命により下領に視察に来た。あわせて新領主ユリナス殿を紹介する」
「デヘヘッ新領主のユリナスです。よろしくねっ」
これで良いのか? 転校生みたいなアイサツだが。
「これはこれは新領主様、先の領主が広大な領地に国替えされて寂しい思いをしておりました」
「どうぞ領主様の故郷という想いでわたくし達に何なりとお命じ下さい」
先住者は別に死んで無いし! 栄転してたのかよ。
「……でも巨額の借金があったりして!?」
「めっそうも無い! ブドウ酒からワインを作りまして王都に送り常に利益を出しております。今村には9000万エピ程の貯えが御座います」
マジか?
「あっでも荒くれなゴブリンとかオークとか居たりするんじゃないの?」
「えっゴブリンやオークがお望みですか? 申し訳ありません、居住しておりません」
おかしい何の問題も無いのか?
「これ早く挨拶しなさい」
「りょ、領主さま初めまして」
ぺこっ
娘の幼女がっ貴方達は気の良いペンション経営夫妻ですか?




