ドキドキギルド
ーそうしてユリナスは再び冒険者ギルドに来たので御座います。
ふぅ、お姫さんが一緒に来たいと言うの止めるのに苦労したけど、なんだか普通~にギルドに来れたぞ! いかついヤツに絡まれたらどうしようとか思ったけど、誰も何も言わないし割と上手く溶け込んでいるなフフ。
ヒソ
(仮面のアイツ、なんで髪も耳も腕も全部同じ銀ピカなんだ?) (あの帽子、絶対女ものだよな?) (もしかして凄い奴なのかも……ダメな意味で)
実はユリナスの異様な姿は好奇の目で見られていた。
ちょっと嫌な気分もするけどスムーズに済ます為に、前に500エピ銅貨くれたお姉さんの窓口に行こう。俺は歴戦の冒険者ぽく妙にカッコ付けながら片肘を置く。
「あのぅ……」
「あっユリナスさんですねっ!?」
早っ。
「え、何で俺の事を?」
「身長と声ですぐに分かりましたよ!」
さすがプロだな話が早い!
「覚えててくれて嬉しいよ」
「確か仲間に見捨てられてミミックに挟まって死んだ事にされて、登録を抹消されたんですよね? とても哀れで印象的でしたので決して忘れません……」
ズーーン!
「……」
いきなり嫌な事を思い出させる常時笑顔のお姉さん。うん、でもそうだよね。
「じゃあおととい預けた鎧を引き出したいんだけど」
「すいません、短期間で余りにも異様な風体に変化していますので、規則により生体認証をお願いします!」
やっぱ異様って思ってるじゃん。俺はコケかけた。
「さっき声が俺だって覚えてるって言ってたじゃん」
「すいません、たまに憑依型のモンスターに体乗っ取られて無意識に金品を引き出す方がいますので」
憑依型モンスター怖いな。え、でもそれも生体認証で弾く事が出来んの? 仕方なく石板に銀ピカの手を置く。
「わぁー凄いテカテカですね、でも……ちょっとどんなのか握ってみたくもなります」
え? お姉さんは俺の手をじっと見ているぞ。
「い、いいよ少しなら?」
「営業トークですよ~」
「だよね」
ピコーン!
しかしめでたく生体認証は反応して、師匠から預かった凄そうな鎧を引き出す事が出来た。
シャキーン!
俺は早速着ていた服の上から鎧を着用する。
「ヘイ、兄ちゃんちょっと待ちな!」
「へっへっへっ」
ドキーン!
うわっモヒカンに鎖とかトゲトゲが付いた鎧の悪そうな奴ら。ギルド名物のガラの悪い兄ちゃん系冒険者にやっぱり絡まれたよ。ヤバイ、俺すっごいドキドキしてる。
「な、ななな何だよ?」
ーユリナスは自分が異常に強くなった事をもう忘れているので御座います。そう、彼が本気を出せばこの者共をすぐにブッ飛ばす事が出来るのです。今まさに絶好の機会が訪れようと……
「その銀のマスク、めちゃカッコイイすね!」
え?
「鎧に女優さん帽子を組み合わせるとか画期的過ぎるスよ!」
「肌が全身銀色とかそれ真似していいスか? 皮膚呼吸大丈夫スか?」
目が輝いてるし何か逆に怖いよ、偶然センスが狂ってる冒険者に出会っただけみたい。
「全然いいよ、真似しちゃって!」
なんか妙に褒められても怖くなって走って逃げた。




