仮・紙仮面
「ふぅ~~湯から上がると、なにやら眠くなって来たぞ、これマリや休む部屋を用意せい!」
ピキーーン!
マリの顔が完全に怒りモードになる。
「あの、ここ旅館じゃ無いのよね。お姫様には立派なお城があるでしょ!?」
「ううっお城に帰ると父上に激しく叱責されるのだ……今はここで心を落ち着かせたいのに、ううっ」
また泣き真似を始めた。
「ハイハイ、わかりましたーっえっとユリナスと同じ部屋よね?」
「そうだ」
「違う!!」
「どっちなのよ、メンドクサいわねえ~」
結局当然別々の部屋に寝て、お姫さまは本当に疲れていたのか、次の日まで起きる事は無かった。
ーそして次の日になったので御座います。
「それで貴方達いったいどうするのよ? もしかしてずっとここにいるつもりじゃ無いでしょうね?」
「えっ部屋貸してくれるって……」
なんか話が違うと思ったが。
「それは貴方一人の場合よっ! お姫様が一緒じゃ、こっちが誘拐犯扱いされるでしょう。なるべく早く出てってよね」
そんな~~やっぱりなんか態度が全然違う! まあ仕方ない部分もあるけどさ。
「でもこんな銀ピカだとお城にも行けないし、当然宿にも行けないし、第一お金無いし」
「お城に戻れば金はうなる程あるのだがなあ」
俺達二人は途方にくれた。
「もう! 貴方がどうしてそんな状態になったか良く考えなさいよ!!」
「と、言いますと?」
「と、言いますと? じゃ無いわよ! 師匠とか言う銀竜シルバー・リリー・ドラゴンなら解除方法知ってるんじゃないの? 聞けばいいじゃないの」
俺はハッとしてしまう。
「その通りだっ! 早速行ってくるよ……いや、その前にギルドに預けてる豪華鎧を着なきゃ」
「じゃあわらわも!」
「ギルドが大騒ぎになるでしょ! 留守番頼むよ」
俺はピンクの切れ端をサッと被ろうとする。
「ちょっと待ちなさい、まるきり変態じゃないの」
とか言うと彼女は奥に消えて行った。
バサッ
彼女はなにやら厚紙を持って来た。
「それは?」
「型紙よ、コレで仮の仮面を作るのよ」
ほほぅ?
見てると彼女はプロの手際で適当にデザインを描くと、バリバリとハサミで切り出し始めた。
「凄い!」
「そして、コレに耳ヒモ穴を開けて~~はい完成!」
「はやっ凄いのだ」
「ありがとう! ちょっとゴメン」
俺は仮・紙仮面を手に取ると顔に当ててみた。そのままピカピカの自分の手鏡で見る。
「おお~~これはカッコ良い」
けど、何かどっかで見た感じが……少しだけ【青い女・蒼鉛竜のビスマス】のデザインに似てる? まあ仮面なんてどれも同じか。
「ぷっだが子供のゴッコのようでもあるの!」
お姫さまが遠慮なく笑う。
「バカね、これを【銀化】するんでしょ?」
あ、そうか!
「銀化!」
シャキッ!
型紙の仮仮面は一瞬で純銀の豪華な仮面に変わる。
「おお~~コレが銀化かえ?」
「あとはそこに私のつば広女優さん帽子をかぶせて~どう?」
どれどれ
「うおーーピンクのアブナイ犯罪者から、怪しい銀色仮面少年暗殺者に昇格したっ!!」
「どっちも駄目じゃない!?」
「わらわはカッコ良いと思うぞ。惚れ惚れするわ!」
でも大丈夫、全身銀ピカはモンスターと誤解されそうだけど、こういう変なカッコしてる奴なら割と冒険者には多いから、怪しまれる事は無いと思う。後は生体認証の石板が反応すれば良いけど……




