スキルもらう
「あの~早くしてくれませんか?」
俺はもう何となく疲れたので、シルバー・リリー・ドラゴンを催促してみた。良く考えたら物騒な話だ。しかし銀竜は俺を軽く無視してボス部屋中をぽけーっと見回している。長命っぽいしボケた?
「おおそうじゃそうじゃ済まぬ済まぬ。この部屋も骨や鎧や武器で散らかって来たしのう……決めた! オヌシを喰うのは一年後じゃ。それまでの間部屋の掃除や身の回りの世話をしてもらおうか」
一年後って喜ぶべきなのか? むしろ凄く怖い気がするよ……
「はぁわかりましたー」
「はぁってやっぱり気の抜けた奴じゃなあ。とりあえず玉座の周りの骨からかたずけてもらおうかのう」
銀竜が巨大な爪で指した椅子を見ると、確かにいっぱい鎧や剣や人骨が散らばってる。うげっこれはキモイ。
「もしかして……この中には俺の仲間のも?」
「奴らは偽の【尽きぬ銀貨】を奪って喜んで飛んで行きよったわ。仲間に生贄にされるとはなんとも不憫で間抜けな奴よユリナス……」
憐みの籠った目でシミジミ言われると、余計に空しいのだが。
「あのーこれから貴方の事を何とお呼びすれば?」
毎回々シルバー・リリードラゴン様って言うのはメンドクサイし。
「師匠と呼べば良いのじゃ」
師匠って? いつか食べる癖に……
「はいはい」
そんな感じで俺はこの銀竜にこき使われる事になった。時に命懸けでダンジョンの掃除、時に攻めて来る冒険者との戦闘を眺め、あるいは戦死した気の毒な人々の骨の埋葬まで……
ーそして1年が経った。
カチャッ
俺はまた溜まって来た鎧や剣を部屋の隅に積み、いつもの様にほうきで掃きさらに雑巾で床をぴかぴかになるまで磨き、掃除を極めていた。
「ふぅ」
こんな物か?
グワオオウアアアアア
お、久しぶりに師匠の雄叫びだ、何かあったかな?
「あのう、お呼びでしょうか?」
俺は掃除道具を置いて師匠の前に跪いた。
「今日は何の日か覚えておるか?」
え、突然何の日だろ? というかカレンダーの感覚が無くなってて正直良く分からない。
「カレーの日ですか?」
「グオウウウウ!」
怒ってる!? うっ違うか、心なしか師匠の頬が膨らんだ様な。
ファーーーーーッ!
どうしたっ!? なんだか師匠の様子がヘンだぞ、光って姿が小さくなって行く……年寄りっぽいから縮んで行ってるのか? 脱皮的な??
ファーーッキラキラキラ……
光に包まれたまま師匠の体がどんどん小さくなると、中からファサッと人影が現れた。
「え?」
「コラッ今日はユリナスが初めてこの洞窟に来た日じゃろうがっ!」
と言っているのは、師匠が化けた? 割と綺麗目な20代くらいの髪の長い人間の女性だ。ちなみに俺は15歳だけど。




