フィアンセ?
「ユリナス、この子は? (やけにスカート短いわねえ)」
笑顔がすぐに消えたマリの事も気になるけど、俺は店の周りを警戒しつつ再会したばかりの彼女に、いきなり厚かましくさらにお願いをする。
「すぐ開けてくれて凄くありがとう! でも細かい事情は中に入れないと言えないんだ!」
キョトンとした顔になったけど、すぐに聞いてくれた。
「いいわよ、最初からそのつもりよ。さぁ早く中に入ってちょうだい!」
俺とエディファニー王女は早速中に入れてもらった。
ザッザザッザ
「ゴメン、彼女は行方不明のエディファニー王女なんだ! 偶然俺が保護して、お城に戻る途中なの」
「そうなのだ世話になるぞよ」
袋から出したティアラを被った彼女を見て『う、嘘~~どういう事っ!?』 みたいなリアクションがあると思ったが……
「ヘェーこの方が王女様なの? お初にお目に掛かります」
彼女は慌てる事無く頭を下げてスカートを持ち上げた。さすがこの子落ち着いてるな! でももうちょっと派手に驚いてくれても良いのに。
「本当はお城に直行するべきなんだけど、俺がこの調子で……」
シュルリとピンクの頭巾を脱ぎ捨てた。
「あらっ貴方とうとうやっちゃったのねえ」
「とうとうやってしまいました。でも何で早くに起きててすぐに出てくれたの!?」
俺の素朴な疑問に彼女はふっと笑顔になる。
「貴方がそろそろ泣き付いてくるだろうなって待ち構えていたのよ。部屋の準備もお風呂も朝食もあるわよ」
エッマジデッ!? いくら何でも良妻過ぎる……い、いやこんな程度で惚れたりはしないけどな! けど凄く嬉し過ぎて涙が出そう。
「あ、ありがと、言葉も無いよ」
ふと急におとなしいファニーを見ると、ぷくーっと頬を膨らませていた。
「なんだ、この庶民女は昔の女処か今の女か」
お、凄く不機嫌そうだけど、凄い誤解。
「誤解です! 違います王女!」
「誤解だよ! 彼女に失礼だし」
見事にシンクロする俺達。
「なんだ息もぴったりではないか」
俺達は不機嫌になった王女を伴って朝食を摂る事にした。
「つまりユリナス貴方、欲に目が眩んで悪人にホイホイ付いてったら、謎の能力が発動してお姫様を救出出来たんだ? 凄い棚ぼたねえ」
「何だナスビィーは今日初めて能力が発動したのか? それよかナスビィーかユリナスかハッキリするが良い」
「ごめん、本名はユリナスでナスビィーは変身名にするよ」
俺と王女はマリが用意した朝食を食べながら話した。
「王女様お口に合いますでしょうか」
「安心せい、空腹ゆえ例えどんな物でも美味だぞ」
「ムッ」
マズイ……マリの顔が正直に不機嫌に。誤魔化さねば。
「でもその為にこんな銀ピカ人間になっちゃってさ」
「それはいつ解けるのよ?」
正直そこまで考えて無かった訳で。
「朝日と共に解けるかなあと期待してたんだけど、明日くらいには……」
ハッ
俺は突然師匠との会話を思い出した。『銀化は永久、本物の銀じゃ』うわ……やっちまった。
「お~いどうしたのよ、夜の街角で突然目が合った野良猫みたいな顔しちゃって」
「本当にどうしたのだ?」
「ううぅ」
俺は仲間に見捨てられて裏切られて死んだカッコ悪い過去は上手く隠しつつ、師匠から貰った銀化の事だけは伝えた。
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