不安と出発
心なしかファニーは寂しげな顔をしている。
「でも安心してよ! 別にアルパカイン国民になる訳じゃ無し、アルフレッドの父王に少し挨拶すれば良いだけみたいだから! 領地もらって現地をちょっと確認したらすぐに帰って来る」
「でも領地だけでは無く、フィアンセももらったりするのであろう?」
ドキッ!
俺はレミランの顔が浮かんだ。ヤバイ考えてる事見透かされてる?
「そそそそんな訳無いよ。フィアンセは師匠とファニーだけだよ!」
「二人も居る時点でおかしいであろうがっ」
「たはは」
俺は頭を掻いた。
「昔のわらわなら城を抜け出して一緒に行く! と言い出す所であろうが場所があのアルパカインであるし、しかもわらわは聖女になってしまった。我が国の平安を守る為に祈り続けねばならぬのだ。もう昔の様に安易に城を抜け出す訳にも行かぬわ」
そうなのか……そう思うと寂しいな。
「じゃあその代わりに俺が城に来るよ!」
「本当か? 帰って来たら楽しみにしておるぞ。では、しばしの別れの挨拶だ」
そう言ってファニーは目を閉じた。って普通に侍女とか衛兵が見てるんだけど!? やばいファニーじっと待っている。
「うっ……分かったよ」
俺はそっと近寄ると軽くだけ唇に触れた。
ちゅっ
「うふふ行ってらっしゃいだな」
「で、では行って来ます!」
俺はくるりと踵を返すと聖女の間を出た。
ーとかカッコ付けてファニーに別れを告げてから一週間が経った。恥ずかしいよ、直ぐに出発する雰囲気だったのに。
「いつになったら出発するのだ?」
マリの館にお忍びで来ているファニーが催促する始末だ。
「本当だよ、この国のファニー王女とも知り合いになれたから良いけど」
「角や牙は生えておらんのだ!」
「うふふ、おしゃまな王女さんで良かったわ!」
「そ、そうね……」
レミランだけ複雑な表情を……それはともかく、ヒイラギちゃん達は深夜に飛び回って探しているが、結局見つからない。お陰で俺は寝不足だよ。こんな事アルフレッド達には絶対に相談出来ないし。
「いつ出発すんのよ?」
「マリ分かったよ、皆待っててくれてありがとう、では明日出発する! それで良いかな?」
「やっと決心が付いたのじゃな」
「よし、そうと決まれば我もゴブリィを縛ってでも同日に銀竜村に帰ろう!」
「イヤーーッ!」
ーそして次の日になったので御座います。
「よし、師匠にもらった一番高い鎧に剣を付け、新しく買った二台目の馬車と、汎用品に装備を付け替えたソラと一緒に出発だっ!」
「よし! 行くぞっ」
アルフレッドも号令して俺達は出発した。心の片隅にヒイラギちゃん達を心配しながら。




