結局ココしか……a 飛ぶっ!
「今だっっしゅごーーーっ」
陸ペングインの要領で腰辺りで両てのひらを広げ、思わず口で叫んでみる。
シュゴーーッ
出たよ。足裏の魔法陣から何らかの魔法物質が噴き出した。
「てやっ!!」
ふわっ
次の瞬間、気合で飛んだ。人間って気合で飛べるんだ……最初こそ足裏から何かを吹き出して浮くという不安定な飛行方法に慣れを必要としたが、コツをつかめば自由自在に飛ぶ事が出来た。
「ウヒョーーッ」
誰も聞いていないのを良い事に、俺は恥ずかしい叫び声を上げてしばし八の字飛行や急降下など曲芸飛行を楽しんでしまう。
ちがう! 危ない危ない。早くお姫さんを救助しないと、クヌアーがもし豹変してたら……俺はひときわ高く飛ぶと目をこらした。
「どらどら? あ、居たっ!!」
すぐに見つかった。アジト洞窟から街への直線上の少しばかり移動した場所に、とぼとぼと必死に歩く二人があっさり見つかった。
キィーーーン
しゅたっ
俺は突然二人の前に舞い降りた。
「やあっ!」
「ギャーーーッ!」 「何事かっ!」
二人をびっくりさせてしまう。
「ナスビィーあんた飛べるのかい?」
「当たり前でしょっ!!」
本当はさっき飛んだ超初心者のクセに、いきなり蒼鉛竜のビスマスの真似をしてみる。
「まあよいわ、この剣重くて疲れたぞっ!」
「うっわーー俺の剣を杖代わりに!?」
お姫さんは俺の大切な名剣に全体重を掛けていた。しかも地面は荒野で小石がごろごろ。鞘の先端は見るも無残な傷まみれになっている事だろう。早く紙やすりでこすってから磨き粉で再ポリッシュしないと。
「返してくれるっコレだから女の子は!?」
「何を怒っておる? 明るい陽射しで見てもソナタ不気味だのう」
でもこうしてられるのも、クヌアーが真面目に姫をエスコートしてくれたお陰だ。
「クヌアーありがとう! 俺は君が決して裏切らないと信じてた」
ごめん嘘、かなり心配してたよ。
「そ、そうかい? 結構気まずい旅だったよウフフ」
「そうだな。さらった相手に護衛されるなぞ、今後は絶対にごめんだな」
シィーン
この子めちゃ気が強いのを差し引いても、そりゃお姫さんの言う通りだよな。
「お姫さんも気を付けないと、フラフラお忍び遊びしていたら、また悪い人にさらわれるぞ~?」
シィーーーン
場を和まそうとした俺の言葉でさらに泥沼にはまる。ミスチョイスだったな。
「そうだな?」
チラリとクヌアーを見る姫。途端に彼女はもっと気まずそうな顔になった。
「じゃ、じゃああたしはここら辺でドロンするよ」
「え、こんな中途半端な場所で?」
「お姫様も今回は特別に罰しないって仰ってくれてねえ、お気が変わらない内に退散するよ」
え、そうなの。
「お姫さん?」
「気が変わん内に、その通りだな!」
嫌いみたいだね、仕方無いや。
※陸ペングイン……ペンギン型の初心者用モンスター。弱いが可愛い。




