何故に強くなる
「何だコイツ、急に銀ピカになった?」
「関係ねえ、ヤレッ!!」
ゴロが言う通り、俺は銀色のピカピカに成りながらも、何故か自由に動き回る腕が面白くてじろじろ見ていると、今度はツキーが斬り掛かって来る。
カシュッ
短剣の刃先が腕にかするが、先程と同じ様な鈍い音がするだけ。
「それでもピリッと痛いんだってば!」
バッ
思わず俺はツキーをてのひらで押した。
ビュンッ!
「アーーッ!!」
「え?」
押されたツキーは洞窟の暗闇の奥に飛んで行って消えた。うっ軽く押しただけなんだが?
「ナ、ナスビィーてめえツキーに一体何をしやがった?」
こっちが聞きたいわ!
「クヌアーは?」
「姐御ならまだ寝てるぜ!」
「良かった、とにかく落ち着け!」
カチャッ
俺は落としていた名剣を鞘に戻した。
「銀ピカモンスターに言われたくねーぜっ!」
とか言いながらやっぱり斬り掛かって来る。
ビューンッ
見える! 何故か凄いゆっくりだ……
ドスッ!!
俺は少しだけ身を屈め、ツキーの腹部に軽くパンチを決めた。なんだか反射神経も良くなってる気が……
「ガハッ!」
ドサッ!!
軽く殴っただけのつもりなのに、ツキーは壁に叩き付けられてから崩れ落ち気絶した。仲間を殴ってしまった……だが急いでいるから感情を殺して、俺は振り返って姫を見る。
「ふっ、お姫さん大丈夫かい?」
のつもりだったんだけど、すっかり俺は心の中で姫を救う美形騎士になってしまっていた。彼女は俺の事を潤んだ瞳で見ている事だろう……
「うっ……ぎゃはははははは、な、何のつもりだソレは!? そなた銀ピカではないかっ! 銀色の男の口がぱくぱく開いて何か喋っておる!! うぷぷぷ、おも面白過ぎるわっわはははははははは」
どバシバシ!
お姫さんは違う意味で涙を流し、床をバンバン叩いていた。俺は言葉が出ない。
「お……」
お前、ココを無事に出たら絶対にグーで殴るからな、絶対だぞ。
「でも助かったぞ、最初疑った事は謝ろう」
姫は軽く頭を下げ、スカートを1ミル程上げた。
「お」
ちいいいぃっ殴る決心がっ!! 違う意味で嫌な子だなっ。
ダダダッ
再び足音が迫る。
「誰か居るぞ!」
「3人組なら殺せっ!!」
今度は反対側から、たぶん敵軍兵士数名が走って来た。
俺はすかさず、お姫さんを秘密小部屋に押し込んだ。
「アンタはここで待っててくれ!」
「わかったぞ」
今度は素直に聞いてくれた。
「待ってくれ、ここに姫などいないし3人組は去っ」
カキンカキン!
時間稼ぎなど効果が無く、暗闇の中から矢が飛んで来て俺の体に当たって落ちる。おいおい目の前にお姫さんが居たらどうすんだよ?
「お、おい話聞け!!」
ダダダッ
まだ走って来る、バカなのか。