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社交界の華


 庶民の街とか自分を大貴族とか言ったり、ちょいちょいおかしいなコイツ。


 師匠こんな奴思い切り無視だっ! 俺は不遜な師匠の事だから、大船に乗った気で安心してこの男がバカにされる瞬間を期待した。


「うむ、そうかソナタ大貴族か? ちょっと興味があるな……」


 え? 師匠……何でだよ、貴族とかそんなのドラゴンには関係無いじゃないか!?


「ええ、では是非麗しき貴方のお名前を」

「うむ、ワシの名はリリーじゃ! リリィー様と呼ぶが良いぞ」


「リリー・サマー? なんとシンプルかつ洗練された美しいお名前。貴方にピッタリだ。それとマリ殿、貴方に謝らなければならない。リリー殿がワシと言っている以上、マリ殿も普段ワイと言っていてもおかしく無い」


 俺はコケた! どんな知能だよ、コイツもしかして大バカなんじゃ?



「わ、わわかってもらって良かったわ、うふふふふ」


 何故かマリが俺の事をにらむ。彼女は普段自分の事をワイと言っている事にされてしまった、俺のせいで。


「リリー殿、是非貴方を私の国にお招きしたい……そして出来れば私のパートナーとして社交界で皆に紹介したいです。そうすれば麗しい貴方はたちまち社交界の華とうたわれるでしょう!」


 シィーン

 こ、こらこらお前ビスマスに全力でアタックしてただろうがっ!


 彼女がいないからってどんだけ浮気者なんだよ。師匠、今度こそこんな奴壮絶にフッてやって下さいよ!!


「それは本当か? ワシが社交界にデビューを? 興味あるのじゃ……」


 俺は全力でコケた。嘘だっ! 俺の師匠はそんな事言う人じゃない!!


 フフッ

 え? 今師匠が俺の顔を見て笑った。もしかして俺をからかってる? 俺が師匠の事でヤキモキしてるの見透かされてる? まじかーっ。


「おおっそれはありがたい。今は秘密の任務がある故叶いませんが、後日必ずお迎えに来ます。その時が楽しみだ」


 秘密の任務って何だよ? また悪い事しに来てるのか……やっぱり今討つか?



「うむ、では店の用事は済んだのじゃな?」

「ええ、マリ殿の銀細工を受け取りに来て、代金を支払った所です」


 カチャッ

 アルデリーゼは小さい箱を見せた。


「いくらのヤツじゃ?」

「300万エピよ」


 マジかよ……すげえ上客だよ。そりゃ怒らせたくないな。


「素晴らしい物です」

「うむ、では用事が済んだのならば今日はもう帰れ!」


 ぴっ

 師匠は犬にでも命令する様に指を指した。いつもの師匠だけど……この男キレるかな?



「ふふっ美しい上になんと気位が高い。貴方の事がますます気に入りました。その通り今日は退散致しましょう。またです、リリー・サマー殿マリ殿、その他一名!」


 奴はカッコ付けて一礼すると店を出て行った……疲れる奴!!

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