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帰宅


 ピキューーン! ハッ

 聡明なマリは俺の余りに必死な形相を見て、何かを感じ取ってくれた様だ……


「頭が……痛いの?」


 俺はコケた。


「マリ殿この様な者は放置して、中庭に居るワイ何とかを見せて欲しい物だが」


 しつこいなコイツ! やっぱりマリの目とか無視してヤッちまうか。いやそれはそれで、こんな兄でもアルフレッドが悲しむだろうか?


「だからダメだって、実は普段マリは自分の事をワイって言ってるんだ!」

「そんな訳無いでしょー!!」

「ほ、本当は実は中庭にはワイルドという巨大なニワトリが居るんだ!!」

「巨大ニワトリ? それはそれで見てみたい物だ。マリ殿、中庭を見せてもらうぞ」


 アルデリーゼはとうとう強引に店側から中庭側に移動しようとする。


「お客様でもダメよっそれ以上はプライベートエリアだから」


 ほら見ろ! とうとうマリにまで拒否され始めた。普通に考えたら分かるだろが!



 スタスタ……

 所がアルデリーゼはマリの制止を無視して店の奥に入ろうとする。


「おいおいコラ、聞こえないのか?」

「聞こえている! 私は何をしても怒られないのだ。店の奥が見たいと言えば見ても許される」


 こ、コイツ! 俺は一瞬店の中だが銀化してライトニングスプラッシュを撃ちそうになる。


「だ、だめです。貴族のナルディーノ様とはこれからも良いお付き合いがしたいのです」

「では中庭くらい見せれば良かろう?」

「おい」


 ふぅ今この場面に俺が居合わせて良かった。とりあえずこの男の腕を掴んで裏通りにでも連れて行こう、そう決心した時だった。



「何じゃ何じゃ何の騒ぎじゃ?」


 知らない内に帰って来ていた師匠が花を食べながら俺達を見ていた。


 シュバッ!

 俺は一瞬でその花を奪う。


「何をするのじゃ?」

「普通の女の人は花なんて食べないの!」


 俺は師匠の耳元で言ったが、よけいマズイ事になったと思った直後。


 カシャッ

 アルデリーゼが杖の様に片手に握っていたヤケに細い刀身の剣を床に落とした。

 今度は何だよ?


「美しい……」


 お? アルデリーゼの奴は落ちた剣を拾うでも無く、師匠に見とれている。ふぅ次から次へと余計な事が起こるなあヤレヤレ。


「あらあら」


 これにはマリも呆れて見ている。けれど師匠のお陰でソラの事が彼の脳内からは飛んだようだ!



「師匠、この男は危ないヤツなんだよ。気を付けて」


 俺は耳元でささやいたけど本当に気を付けるのはこの男の命の方で、ヘタな事をしたらもはや蒼鉛竜くらいしか師匠を止めれる者は居ないだろう。


 シュバッ

 とか思っているとアルデリーゼは師匠の前でひざまずいた。


「わたくし故あって詳細は申せませんが、さる大国の大貴族の次男であるナルディーノと申します。この様な庶民の街に貴方の様な美しき方がいらっしゃるとは目の覚める想い、どうかこの私に貴方のお名前をお教え下さい」

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