小ネタ⑩ パワーアップ
「ファニー、大丈夫?」
ちょっと怖いが俺は彼女に声を掛けてみた。襲い掛かって来たりして!?
「ふぉ~~どうじゃ、パワーアップしたわらわの姿は……」
うっ陶酔していたファニーがこっちをグリンと向いた。
「う、うん想像してたのとは違うけど、見事聖女になれて良かったね」
「よし、ならば記念に一緒に湯に入ろうぞっ! ふぅ」
ちゃぽっ
謎のオーラタイムはすぐに終わって、彼女は何事も無かった様に輝くお湯に入り直した。
「え~~結局温泉を堪能するんだ!? 仕方ないなあ」
カチャッ
俺は服を脱ごうとするが。
「何を脱いでおる、そなたタオルを持っておるのか? そのままで良いから入れ!」
「キュピッ」(迷惑な客だなあ)
確かに俺はタオルを持っていない……仕方ない、服を着たまま入るか?
チャポッ
そうして俺達はカピ様を挟んで久しぶりの混浴を果たした。なかなか良いお湯な上に輝いてるから雰囲気バツグンだよ。
「ふぅ、所でどんなパワーアップを果たしたの?」
「うむこのカピ様の効果で国は平和になり安定し、肩こりや腰の痛みが治りそしてわらわは高位の回復魔導士として目覚めたのだ」
凄いそんな色々な効果効能があるんだ!?
「じゃあ死んだ者を生き返らせたり?」
「それは無理だが死にかけの者が一瞬でシャキッと元気になるくらいの力はあるぞ! これでソナタとつり合う程度には強くなったなっ」
にこっ
彼女はカピ様を挟んで満面の笑顔になった。
ドキッ
「ごめん、俺なんて最初から王女の君には釣り合わないFランク回復師なのに、そこまで考えてくれてたなんて」
「うふふフィアンセだと最初に言っておったではないか」
覚えてたんだ……
ドキドキ
どうしようお湯の中で見つめ合ってしまう。
彼女も相当に可愛い事を忘れていたよ、凄く緊張して来た。でも最近気が多過ぎてダメだよ……こんな時でも街に置いて来てしまったマリの事も気になるし。
「……」
「これ何を考えておる? キスすれば良いではないか」
「えっ」
「キュル~」(そうだそれがいいぜ)
ザバッ
彼女はカピ様を押しのけて目を閉じた。
ドキッ
どうすれば……
ガラッ
が、突然ドアが開いた。
ドキーン!
「無理やり外に出されたご婦人方がまた入りたいと言っているぞ……いやスマン」
入って来たゴブルラがバスタオル姿のファニーの両肩を持つ俺を見て緑の頬を赤く染めた。
「こ、これはっち、違うんだっ!」
「何が違うのだ? 間違いでは無いぞ」
「ほぅ? で、では急いでくれ領主様」
スタスタ
ゴブルラは少し怒って出て行ってしまった。
シィーン
「あ、仕方が無いね、もう出ようか?」
「むーーっ庶民など待たせれば良いではないかっ」
こういう所が姫だなあ。でも俺は渋る彼女を急かし小脇にカピ様を抱えて湯から出る事にした。
ザッバァーーッ
「キュピッ」(もっと入ってたかったぜ)
「服を着てわらわも出る!」
「うん」
ぱちゃっぱちゃっ
俺は慌てて出て、濡れた服のまま池に落ちた人みたいな状態で皆の前に出た。
「びちゃびちゃでどういう状態なんだぃ?」
「服着たまま王女と混浴してたのさ、このスケベめ」
「全裸なら全裸でヘンでしょ……」
ガラッ
「ふぅわらわも大急ぎで出て来たぞ、庶民の要望に応えるのも王女の務めゆえな!」




