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小ネタ⑧ 銀竜村温泉


「あれから一日と半、果たしてカピ様はどのくらいの移動能力があるのかな?」

「丁度今頃シルバー・リリー村に着いてる頃だったりして!?」


 何故だかマリは嬉しそうだ。


「何だとっではすぐに銀竜村へ飛ばねばならぬなっ!」

「よし、二人を抱えて早速飛ぼう」


 そっ

 俺はマリの腰に手を回そうとした。


「嫌よっ何言ってるの、私が行く訳無いじゃない!?」


 し、しまった! ファニーと一緒に抱えて飛ぶって、マリの嫉妬心に火を付けてしまったか!?


「じゃあどうするの?」

「私はソラに村までの道すがらにカピ様が走って無いか探すように言うわ」

「うん頼むよ」

「早うせい!」


 ふわっ

 ファニーは後ろに倒れ込んで来て抱えて……


「全身銀化」


 ジャキッ

 そしてそのまま俺は窓から飛んだ。

 シュバッ


「ふぅめんどくさいわねえ、適当にソラに命じておきましょう」

「あ、ちょっと? 皆待てよ……」


 マリは歩いて病室を出て、ツキーは完全に放置された。

 シィーン



 ー銀竜村

 カピ様は聖なる力で恐るべき速さを発揮し、もう銀竜村に到達していた。


「キュルッ?」(ここが銀竜村か? 確かに何も無い村だぜ、ここにクヌアーが来てるのか)

「わーっカピパラさんだっ」

「怖いわっ絶対かむよっ」


 早速ゴブリィとファンヌに発見されるカピ様。


「キュウッ?」(ちっ早速ガキに見つかったか。子供は嫌いだぜ、早く大人の女と混浴したい気分だ……)


 今まさにカピ様は聖なる本能で、適齢期の女性との混浴を欲し始めていた。危険な兆候である。


 シュタタッ

 彼は走って逃げた。


「ああっ!?」

「カピパラさんがっ追い掛けろー」



 カーンコーンカーーン


 銀竜村では二週間余りの恐るべき速さで、新・代官館の建設が始められていた。そもそも旧領主館の基礎は残っていたので、その上にそのまま建設を始めていた。


「ふぅ早く完成しないかねえ? やっぱり村人やゴブリィの家に逗留するのは気を遣ってしまうねえ」


 クヌアーとゴロは日がな三角座りをして工事現場を眺めている。


 ゴロは常に村の全財産数百万エピを盗まれない様にしっかり抱えていた。ゴブリン達約300名も5000万エピを割った分、一人16万エピを得ている。


 田舎では16万あればそこそこの金額である。とは言え、やはり新たな産業を起こさなければいけなかった。


「ひ、暇だねえ」

「そうスね」

「そうだクヌアーさんアンタ、銀竜村温泉に行けばいいよ!」


 工事の最中にゴブリュンさんが二人に声を掛けた。


「銀竜村温泉なんて物があるのかい?」

「あぁ、ユリナスさんが落とされた崖底の川沿いに立派な露天風呂があるんだ、村人の憩いの場だよ」


 クヌアーが目を細めてゴブリュンさんを見る。


「それって……どうせ混浴なんじゃ無いのかい?」

「ハハハ安心して下せえ、ちゃんと男女別々で覗き対策もバッチリな安心安全な露天風呂だよ!」


 田舎の割にはキッチリした村であった……

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