小ネタ④ 聖なるカピ
ドンドン……
激しいノックの嵐の中、二人はガマの油なみに冷や汗を流しながら顔を見合わせた。
ーその時、二人の脳裏にはアノ時の記憶が蘇っていたので御座います。
ほわんほわんほわ~~ん
カランッ
どういう事だ、ソラの口から突然吐き出された兜は真っ赤な鮮血だらけだよ。
「ひぃいいいい!?」
「こ、これはっ!?」
「きゅうきゅう」
でもソラは羽をバタバタさせて喜んでいる。お前が起こした事なのに。
「ユリナス……これって、つまりアレよね?」
「ソラは……アレをアレした訳で……」
ビシッとマリは俺に指を指して来た。
「早く自首しなさい!」
「な、何でだよ、何で俺が自首するんだよ、獣のした事じゃん?」
「獣の飼い主は貴方でしょ、飼い主が事故の責任取るのよ」
「でも場所提供したのはマリじゃないかっ君も共犯関係にあるね」
「何でよ!」
二人は醜く罪をなすり付け合った。
「ユリナス銀化ッ!」
シャキッ
俺は全身銀化すると地面を掘り始めた。
「ちょ、ちょっと私の中庭で何してるのよ!?」
「証拠隠滅だよ、10ミョートロ程掘ればバレ無いだろ?」
「我が家に埋めないでーーーーッ!?」
ザシュッザシュッ
だが俺は構わず大穴を掘ると、血にまみれた兜を地面深く埋めた……
「光の炸裂弾で空中爆破した方が良かったか?」
「目立つわーーーっ!」
ほわんほわんほわ~ん
「どうしたのじゃ、何を二人して固まっておる? 外の騒ぎは何じゃ」
師匠が不思議な顔で俺達を見て来る。
「師匠実はちょっとした誤解で俺達城の警備兵に疑いを掛けられてるかも知れないんだ」
「俺達じゃ無いでしょ、貴方の単独犯でしょ」
「いや君はもう一蓮托生だよ、奥方さま!」
「もう奥方さま言わないでっ殴るわよ」
外の騒ぎで俺達は血みどろの殴り合いになりそうだ。
「何じゃ何じゃそんな事か、ならばワシが全て消し飛ばしてやろうぞ!」
師匠が腕をワキワキさせる。
「はわわダメダメ」
「心配性じゃなあ、では城ごと根本から消し飛ばせば全て丸く解決では無いか」
「お、そうだなあ!」
ポカッ
マリに頭を殴られたよ。
「貴方可愛いフィアンセちゃんのエディファニー王女を忘れたの?」
ハッ
忘れていた。俺はファニーの存在自体を完全に忘れていた。
「そうだ、俺が助けた姫を俺が消す訳には行かないよ」
「助けたとか関係無くダメ」
「ではどうするのじゃ、ドンドンうるさいのじゃ~」
ドンドンドンッ
「きゅう~~?」
「安心しろソラ、お前を手放さないから。仕方ないよ、マリの館と財産を全て遺族に賠償して、俺達は銀竜村に移住しよう」
「何で私の財産よっっ!! 私関係無くない?」
「おおっそれは良いのじゃ、あそこは何も無くて良い所ぞ!」
師匠は超笑顔だが、俺達は深く沈み込んだ。




