青い女a
ザッザザッザ
俺達は可哀そうな姫を放置してリビングに戻り、その後いきなり三人は酒盛りを始めた。おいおい、明日早朝の重要な取り引き大丈夫なんかよ? ……などと心配する訳も無く、もっとやれとどんどんと酒を飲ませまくった。
「ささっ皆さんどんどん飲んで下さいよ~~」
ドボドボ
とにかく必死に酒を注ぎまくった。
「お前も飲めやい」
「いや、俺まだ未成年で、それにアルコールを消化する酵素が無いから死ぬんスよ!」
「コウソて何だよ?」
乱暴者は酵素も知らんのか。それは兎も角、さらに必死に酒を飲ませまくった。
ドボドボドボ
「ねえ、ナスビィーお前さんやっぱり可愛い顔してるねえ? 悪事以外にも色々仕込んであげようかい? ウフフ」
クヌアーがまたしな垂れ掛かって来る。うぷっ酒臭い……だけど確かに美人っちゃー美人だしスタイルも良いし……とか思ってると手下二人が鬼の形相で睨んで来た。
「あははっそれはおいおい。でもそろそろ寝た方が良くないっスか?」
なんか俺の喋りがだんだん下っ端Aみたいになって来て悲しい。
「そうだねえしっかりしてるねえ」
「俺、見張りしてますよ、皆さん寝て下さい、どうぞどうぞ!」
「そうかい、悪いねえ」
なんかここまで信じきってくれて良いのか? というくらい俺の事を信用してくれてる。ルウィナ達には裏切られたばっかりなのに複雑だよ……
「じゃあねえウフフ」
「うん」
そしてクヌアーは専用個室へ、手下二人はリビングでごろ寝を始めた。うっ寝れん。というか寝ちゃいけない訳だから丁度良い事だけど。はぁ~しかし、もしあの時マリの誘いを受けて部屋を借りていたら、
『夕食作ってみたの食べてみてくれる?』
『ちっしゃーねーなー』
とか言いながら、わちゃわちゃして楽しいひと時が訪れたかも知れないのに、なんで俺はこんな事にっ!? 後悔しつつ、とにかくひたすら必死に夜が更けるのを待った。
アオーン
いくつもある別な入口からかすかに狼の鳴き声が聞こえる。俺はそっと上半身を起こして手下1号2号の顔を慎重に確認する。
「グ~~」
バカみたいに大酒を飲んでいたから、大口でいびきを立てて熟睡してる。これなら大丈夫だろう。
むくっ
活動開始だっ! 次は変な意味では全く無く、クヌアーの個室に忍び込んだ。
パサッ
扉も鍵も無くカーテンをめくるだけだ。
「んん~~ん」
ドキッ
寝返りをうつクヌアー。うっ色っぽいでやんの。しかし今はそんな目的では無い。俺はクヌアーの顔を凝視するが、演技などでは無く本当に熟睡している。よし、そ~っと移動開始!!
サッササッサ
俺は灯り魔法を点け、なんとか記憶を探り姫さんの隠し部屋に辿り着くと、でっぱりの小石を探した。
「これかな?」
しかしまだひねって扉を開かない。俺はそのまま一旦出口に向かう……もちろんお姫さんを見棄てる訳では無くて、出口の最終確認だ。
ざわざわ
え? なんだか俺がここに入って来た時の洞窟の出口が騒がしい。
「嘘だろ……」
俺が慎重に穴から外を見ると、早朝に待ち合わせのハズの外国の隠密部隊がもう到着していた。はやっ! 律儀かっ悪人達の癖に真面目か!?