和議と嫉妬b
「ちょ、ちょっと……勝手に決めないで下さい」
ギロッ
「何だぁ? アンタが何も言わないから俺が代わりに言ってやってるんだぜ、何か文句が?」
「い、いやあ、そういう訳でも、もごもご」
凄い! エーリュク絵に描いた様にモゴモゴしてるよ。
彼は消えた将軍達に比べて人が良いから代表に推挙したのに、人が良すぎてダルアガートに好き勝手されてる! 将軍達は横柄で性格が悪いけど、時にはああいう横暴さも重要なのかな。
「そちらが意志統一されておらぬならば丁度良いわ、捕虜の命なぞ不要! 砦の外の本隊が無事で、私とビスマスさえ飛んで帰れればそれで良い!」
シィーン
第二王子とは思えないアルデリーゼの発言に沈黙が走る。何てヤツ!
命を懸けて戦った部下達の命なんてどうでも良いなんて……本当にこの男がアルフレッドの兄でビスマスと親しい男なのか? 王族というだけでこんな痛いヤツがチヤホヤされるなんて間違ってるよ。
でもビスマス自体は和議交渉には興味が無いのか、黙ってて何も言わない。
「坊ちゃま! それでは兵達の心が離れどの様な大望も果たせませんぞ!!」
ヒィッ突然だな、ジイここに居たの!?
「何だジイここにおったか? 坊ちゃまとか普段呼ばぬ言葉を使うな」
「当然に御座います」
俺と同じ事言ってるよ。
「第二王子殿下、和議がおかしな方向に行かぬ様に、急いで走って来ましたぞはぁはぁ。この際、賠償金をお支払いする取り決めをした方が良いかと」
よく砦の中通してもらえたな!
「何故だ?」
「本陣にいた捕虜は将来第二王子殿下をお支えする重要な腹心も多数含まれておりますぞ。その様な者達を見捨てれば貴族たちにも動揺が走りましょう」
「むぅ」
信用してるらしいジイに説得されて、性悪そうなこの男も少し揺らいだ様だな!
「何だよ物分かり良い爺さんじゃねーか!」
「ダルアガート殿、和議の交渉はこのご老体と私が取り仕切ります!!」
常識人が出て来てエーリョク君がちょっと元気が出て来た。
「まあいいや、横で見ててやるよ」
「では私とビスマスが見届け人だ、本陣にいた捕虜達と交換する賠償金の金額を決めて頂きたい!」
う~ん嫌だなあ、人の命の金額を決めるなんて役割……
「良いでしょう」
「俺も良いぜ」 「良いだろう」
「ふん」
その場にいた主要四人が同意した。
「で、いくらにするんだアルデリーゼ?」
だきっ
アルデリーゼにしな垂れ掛かる様にしてビスマスが聞いた。
ちょっとちょっと、高級バッグのお買い物じゃ無いんだからな、人の命をなんと心得てるんだよ……って綺麗ごとはともかく、本当は彼女とアルデリーゼの密着具合が気になって仕方が無い。
でも冷静に考えてあっちは大国の第二王子で金髪の貴公子、それに対して俺は最初の洞窟で既にFランク回復師だと正体がバレてるし、普通は金持ちの金髪イケメンの方を選ぶよな。




