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人質、第二王子


「だがエーリュク君、アルデリーゼに縄を掛けよ! 今から和議の材料にする」

「は、はい!」


 エーリュクがさらに指示すると部下達が高貴な金髪の第二王子を縄でぐるぐる巻きにした。

 シュババッギュッ!


「ビスマス~~?」


 途端に情けない声と顔で彼女に救助を哀願するが……おいおい。


「済まん、今回はナスビィーに負けた以上手出しは出来ん、甘んじて和議に応じてくれ。ナスビィーも和議が始まれば王子は返すと言っているぞ」


 言ってないけど、今後も両国に禍根を残さない為にそうしよう。


「ぐむぅう、ゼブランド共この屈辱忘れんぞ!」


 ギリッ

 俺の配慮も知らず第二王子は縄を掛けられたまま激しく睨んだ。と、俺はそんな王子を完全無視する。



「ではビスマス、二人してダルアガート傭兵団を迎えに行こう!」

「えぇビスマスどこか行くのか!?」


 またコイツ情けない声を出して。本当にアルフレッドの兄さんなのか?


「安心しろすぐに戻って来る」

「安全に傭兵団を返すにはビスマスの立場が必要だ!」


 シュバッ!

 俺達は飛んだ。


 ー傭兵団が占拠した本陣

 彼らはこの場で捕虜を確保しつつ、ドラゴン騒ぎで停まった戦場を注視していた。


「ダルアガード、第二王子を確保したぞっ!」


 シュタッ

 俺に続いてビスマスも降りて来る。


「ゲゲッビスマスだっ!」

「殺される!?」

「違う、彼女とは休戦中なんだ」

 

 俺は急いで無表情の彼女の前に立った。するとダルアガードが物珍しそうにアゴを触りながら俺達を見て来る。


「ふむふむ休戦中ねえ、実はあんたらグルで双方の国から賠償金せしめるのが目的じゃねーだろうな?」


 ドキッ

 的外れなのに何故か心臓が高鳴ってしまう。



「バカを言うな、先程まで本気の殺し合いを演じさらには我が主人までも降臨したのだぞ。蒼鉛竜様の前で嘘など付けぬわ!」


 ビスマスは言い切ってくれた。確かにそうだ、一瞬だけ二人は必死に戦っていた。またやれと言われても俺はもう無理だと思うが。


「その通りだ、その懸念は無用だ! 我は本当にユリナス殿とゴブリン達の味方だ。という訳で砦を囲む敵本体を突破して砦に戻って和議を行おう」


「うっは、そりゃ大胆だね! せっかく捕まえた捕虜共はどうするんだい?」

「それも必要だ、連れて行くよ。行進中の安全は俺とビスマスが確保するよ」


 途端に隊長が俺達をじろじろ見る。


「ほらほら怪しいなあ、ビスマスがそこまでしてくれるって言うのがさあ?」

「そうですぜ隊長、敵のただ中で襲われたら笑い話ですぜ」

「実は砦はもう落ちてるとか!」


 むっ俺の事まで疑う気かよ?


「では隊長だけ砦まで運ぼうか?」

「いや良いよ、冗談だよ」

(まだ部下達と捕虜がいる方が安全だぜ!)


 彼は必死に首を振った……なら最初から言うなよ!


「その代わり、砦帰還後は第二王子の身柄は返してもらうぞ」


 ビスマスが団長に指を指した。


「あいよ、だが大丈夫だよなナスビィー?」

「大丈夫だ、彼女は暴れたり脱走したり見苦しい真似はしない」


 ビスマスに睨まれてダルアガートは渋々返事した……

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