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山が消える


蒼鉛竜(そうえんりゅう)さま……」


 ぐりっ

 ビスマスが俺をお腹に乗せたまま、頭を逆さまに上げて後ろを振り向く。師匠と弟子? 親と義理の娘同士? で目が合ったのか小さく名前を呟いた。


 ざわっ

 緊張は両軍全兵士達にもすぐに伝わっていた。


「青い竜、これが伝説のブルーネモフィラドラゴンなのか?」

「デカイ!! 空を覆う様だ……」

「ひぃいい殺されるっ」


 若い兵士が一人頭を抱えてしゃがみ込んだ。気持ち分かるよ!


 俺もビスマスに乗っかった恥ずかしい姿のまま、もっと正確に言えば蒼いマスクに手を掛けたままの姿で、冷や汗を吹き出しながら完全に固まって動けない。


「う、撃てっ!」

「バカ撃つなっ!!」


 バシュッ

 頭のおかしい魔導士が一発空に向けて撃ってしまう……

 ピキーーン

 その場にいた全員が竜の怒りを感じた。


「バカめが……」


 パウッッ!! 

 バシューーーッ


 蒼鉛竜が突然力む事無く軽く口から何か吐くと、少し離れた小さい山に当たって閃光が走った。

 カッッ!!


 ー作者の表現力の限界により分かり難いので御座いますが、それはこれまでのどの爆発よりも巨大な物であったので御座います……

 ドドオォオオオオーーーーーーーン!!!



 俺達は呪文も前口上も無い突然の竜の一撃の爆風に、全員何かにつかまって立ち尽くすしか無かった。


 バヒューーーーッ

 物凄い爆風が駆け抜けた後、気付くと先程まで遠くにあった小さい山が消えていた。


「山が……」

「おい、しゃべるな!」


 シィーーン

 驚くべき威力の攻撃を見て、全兵士が言葉を発するのも恐れ始めた。竜の機嫌を損ねてはいけない、それが全員が悟った気持ちだった。


「うっ」


 師匠はもう一年一緒に暮らしてて割と可愛いボケ老人みたいに思って心を許して来たけど、これが本気のボスドラゴンの気迫なのか? 


 あれ程強いボスねぐらで過ごす姿は、実は脱力した弱い状態で、これが本当の姿と力なのかも知れない……そう思うと人間の中では強いと思い込んでいた竜の加護持ちの力なんて大した事無いんだ。師匠、今助けてくれないかなーっ


「何をしておるっその汚らわしい身体を離さんかっ今すぐ消してやるわっ!!」


 しまった、ビスマスに乗っかってるの忘れてた! マズイ非常にまずい、今この場で一番彼か彼女を怒らせてるのは俺だったよ。


「蒼鉛竜さま!!」


 直後、俺の足の下でビスマスがビクッとはねた。それだけじゃなく、本当に小さく首を横に振ってくれた。



 恐ろしい沈黙がしばらく続いた……


「ふっ運のいい奴め。我が義娘(ぎじょう)は汚らわしいお前でも死んで欲しく無いそうだ。命拾いしたな小僧!」

(だが……その若さで六枚の花弁を開花させるとは末恐ろしい奴よ、どうなるか見てみたい気もするな)


 ーなぞと竜が内心考えている事はユリナスが知るはずも無く、彼は動いて良い物か、まだ硬直していたので御座います……

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