血と汗の銀細工!b
ー再び冒険者ギルド
……絶対お姉さん、何時間も掛けてまた50エピ程度で換金に来るなよーっとか内心ブツブツ言ってるんだろうな。しかし満面の笑顔で少額を渡してくれる。
「おめでとう御座います、報奨金50エピです!」
だが白い目で見られても良い、とにかく50エピを握りしめて露店に行き、チープな6スンディ程の大きさの針金細工を買う。
「銀化!」
シャキッ
ポケットの中で躊躇なく即【銀化】。その足でマリのアクセサリーショップに戻った。
「どう?」
俺は自信作の純銀針金細工をマリに見せた。彼女はいっぱしの専門家気取りでしげしげと見ている。
「んーー見事な物だわ。簡単に見えて長年の職人技だけが成せる優雅な曲線、こりゃ凄いわ」
ぷぷぷ、こんな小娘騙す事など簡単だったな!
「で、いくらで買い取ってくれるんだ?」
俺は胸を張った。と、思ったら何か雲行きが怪しい。マリの表情がヘンだ。
「でも、ヘンねえ」
「お、何がヘンなんだろ?」
「これって露店のジミーの針金細工にそっくりなのよねえ」
ギクッ。ジミーさんって名前なのか?
「ほほぅ?」
「でもジミーの細工は見事だけど真鍮や銅線なのよねえ、それが技はジミーなのに素材は純銀……不思議だわ~」
コイツ……見抜いてる。
「実は2時間かけてジミーに習って作ったんだ、それで筋が通ってるだろ!?」
「んな訳ないでしょー、2時間で習えたら超天才だわ」
コイツ、疑り深いな……まあ当たってるんだけど。
「じゃコレ見てよ、俺が作った自信作! 純銀製の500エピ銅貨!!」
ビシッと見せた銀貨に、ますます彼女は首を傾げる。俺はどんどん泥沼にはまって行く。
「え、純銀の500エピ銅貨?? それって偽金よね……密造団あわわわわ」
遂に彼女が、俺を完全に犯罪者でも見る目で見て来た。
「いや違うんだって、話を聞いてよ!」
「誰か呼びますよ、帰って!!」
彼女の顔が恐怖でひきつる。
「ぢのお兄さんは??」
「……ぢが悪化したみたい」
「だから魔法病院行け―ッ!」
ハッと気付くとそれまで強気っぽい彼女は完全におびえ切っていた。怖がらせるだけじゃ完全に本物の犯罪者だよ……もはや仕方なかった。
「これを見てくれる?」
「な何よ、へ変な真似したら許さないわっ」
俺は手短にあった椅子に指を着けた。
ぴと
「銀化!」
シャキッ!
彼女の目の前で一瞬で椅子は純銀に変わった。
「えっ?? どういう事」
彼女は目をこすって何度も見る。
「ハンカチ貸して」
「は、はぁ?」
ハンカチを握る。
「銀化!」
シャキッ
ハンカチはパリパリの純銀の板に変わる。
「うそ……」
「まだわかんないかな~? 俺は何でも銀に出来る能……」
「シッ! それ以上口に出しちゃダメよ」
彼女は俺の口に細い指を置いた。
「……貴方、そんな力見せびらかしてたら……そんな力絶対安易に人に見せちゃダメよっ!!」
彼女は欲に目がくらむ事も無く、いきなり俺の心配をしてくれた。
「い、いやーまだ誰にも見せた事無いけどー?」
俺に教えてくれた師匠以外。