ボス戦
ーカピパラライン王国北、銀竜の洞窟最深部
三か月前、突然有名A級パーティーからスカウトされ仲間になったFランク回復師の俺は、以前では考えられない様な高レベルダンジョンのボス戦扉の前で仲間達と共に待機している。
「とうとうこの銀竜の洞窟のラスボス、シルバー・リリー・ドラゴンとの戦いだぜ。ここまで来れたのも、お前が皆を小まめにケアしてくれたお陰だろうな」
この戦いの為に借金をしてまで購入した全身を覆う豪華な銀色の鎧を纏った、リーダーの魔法剣士ルウィナが俺に話し掛けてくれる。仲間になって以降、彼はこんな感じでいつも気遣ってくれる頼れる優しいイイ奴だ。
「ボク達が安心して戦えるのは全て君の回復のお陰です。今日も思いっ切り魔法をブッ放しますので、しっかり後ろを守っていて下さいよ!」
魔導士のエリッカだ。外見は気難しい様に見えて、オレに色々話し掛けて笑わせてくれるムードメーカだ。
「……貴方に会えて三か月、今までに無いくらいに充実した冒険の日々だったわ。貴方は後ろで守ってて決して動かないで……このボス竜は強いけど私は逃げないわ……どんな戦いになっても貴方の事は絶対に忘れない……」
彼女はダークエルフで魔法格闘家のコールディ……利発で凄くかわいい子だ。え、でもコールディどうして涙ぐむの!? もしかして死を覚悟してる??
「そんな事言わないでよ、またいつもの様に勝って帰って酒場で笑顔で語らうんでしょ?」
「そ、そうだね、変な事言っちゃったね」
「不用意な事を言ってはいけませんよ」
エリッカが一瞬恐ろしい顔をする。
「そ、そうね……」
だきっ
なんて言いながら涙を拭うとコールディは俺に抱き着いた。
マジかー。
身長高い格闘家だけどやっぱり女の子だな、柔らかい感触に包まれる。
「そうだぜ、コイツの言う通りだぜ」
「よし最後の戦いの前に、我らの回復師殿を中心に円陣を組んで気合を入れましょう!」
「そうね」
これって俺を中心にパーティーが回っている? これじゃ完全に主人公ポジションだよ。今まで役立たずと冷遇されて来た人生が嘘の様だ~。こんな大切な仲間を失いたくないな……
グッ
俺達は4人で手を取り合って円陣を組んで気合を入れた。
「よし皆でシルバー・リリー・ドラゴンに勝って、振れば無限に金が出て来るアイテム【尽きぬ銀貨】を手に入れようぜ!」
尽きぬ銀貨は使っても使っても無くならない夢のお金らしい。
ガガガ……
重いボス竜部屋の扉が開く。後衛の癖に武者震いがするよ、とにかく皆死なないで勝ってくれ!




