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恋する少女の異世界記録 〜スキルが強すぎてヒロインになれません〜  作者: 花苗カナ
第6章 竜と祈りの教会

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凱旋① ここにいる理由


「……つまり、いてはいけないはずの7人目ってことか。ふーん、じゃあアリアお前、今ピンチなのな」


 ここに来るまでの顛末をかいつまんで説明すると、カノンお兄ちゃんは心底呆れたように眉根を寄せた。


「相変わらず粗忽(そこつ)だな。親の顔が見たいわ」

「そちらのご両親と同じ顔かと……」

「……でも無事に魔獣を倒した訳だし、神官長の言葉を信じるなら、貴重な戦力ということで雨宮さんがここに居る理由は得られたんじゃないですか?」

「……いや、ことはそう単純じゃないかもだ」


 腕を組んで考え込むお兄ちゃんに、あたしと高遠くんは「え?」と身を乗り出す。け、結構二人で命懸けでがんばったのにまだ問題が!?


「神官長は教会の中では珍しく大らかなタイプでさ、どちらかと言えば甘い方なんだ。けど神官の大半は懐疑派──まあつまり、成り立ての聖女に事あるごとに難癖つけていびろうとしてくる奴らが結構多い。教会ってのも歴史が長いぶん随分閉鎖的な空気っぽいからな。伝統と格式ある組織で子供が権力を持つとなると、反発を覚える輩が出てくるのもまあ仕方ないんだ。んで、今回の予言外の謎の侵入者問題……まあお前のことだけど、これってそういう奴らにとって格好のエサなんだよな、多分」


 あ、あの神官たち、確かにここに初めて来た時めっちゃキレてたし危うくハリツケにされかけたし嫌な感じとは思ってたけど、そんなお局様的存在だったとは! 聖女さんがかわいそう、あんな残念な神さまの元で頑張ってくれてるのに!


「……あたしのせいで聖女さん、困ったことになっちゃうの?」

「んー、結局召喚に応じたのは向こうだし、お前のせいとは思わないけど。まあちょっとばかし面倒なことにはなるかもな。さてと」


 そうこうしているうちに再び教会上空の結界バリアに行き当たり、どこからか声が響く。


『山と言えばーーーー』

「オレオレ。オレだけど」


 お兄ちゃんが詐欺グループのような返答を投げると、門番らしきその人はヒッと小さく悲鳴を上げて、幽霊にでも会ったかのように怯えた声で返した。


『きゅ、救世主どの……!? ご無事だったのですか!?』

「? 元気だけど……。何かあったのか」

『それが、懐疑派の神官達が……』


 言い終えるより早くお兄ちゃんは「げっ」と舌打ちし、背中の羽をフル稼働させて街へと急降下する。


「お、お兄ちゃん?」

「『ちょっとばかし面倒なこと』はもう起きてたみたいだな、急ぐぞ」

「……でも、なんて言って納得してもらえば……」


 ない頭をぐるぐるさせて困窮していると、飛びながら実に器用にデコピンされた。


「あだっ」

「心配すんな。お兄ちゃんにそこそこいい考えがある」


 いい機会だ、あいつら前から気に入らなかったからな、と、お兄ちゃんは実に悪そうな顔で笑うのだった。



* * * * *




 修道院の中をずんずんと闊歩するお兄ちゃんに着いていき、分厚い扉を開けると、室内で何やら揉めていたらしい皆さんが一斉にあたし達に視線を向けた。


「よお、ただいま戻った。英雄の凱旋に出迎えも無しにみんなで仲良くお喋りか? 楽しそうだな、オレも混ぜてくれよ」

「……おお、これはこれは救世主殿。ご無事でしたか」


 部屋は向かい合う二つの集団が放つ敵意でピリピリしていた。片方は神官たち。もう片方は神官長と聖女さんと、勇者チームの4人だ。


「だから何度も言ったでしょう、アリアちゃんは魔族なんかじゃないって」

「いえ、戻るのが随分遅いもので我々も心配で堪らなかったのです。何せ彼女は出自も分からぬ暫定侵入者……。貴重な竜を奪い、救世主様と剣士殿を手にかける目論見が無いという保証もありませんでしたので」

「この性悪聖職者ー」

「いい年してゴミみたいな新人いびりしてんの恥ずかしいぞー」


 毅然と糾弾する渋谷先輩、よく分からない野次を飛ばすマヤちゃんと太一郎君を歯牙にもかけず、先頭に立つ神官はあたしを冷めた目で睨んでいた。


「……しかし、仮にその少女が7人目の勇者だったとすれば、やはりお飾りの聖女の予言などあてにならぬということ。力も弱く神と言葉を交わすことすらまともに叶わない、このような頼りない娘が教会の象徴とは誠に嘆かわし……」

「ノエルの力が弱まってるのは結界張ったり竜飛ばしたりすんので酷使されてるからだろ。あんたらが代わってくれるならいいけど、そうじゃないならぐちぐち文句言うなよな」


 黙って俯いていたノエルちゃんと呼ばれた聖女さんは、お兄ちゃんがきっぱりとそんなことを言うと、パッと顔を上げて泣きそうな目でお兄ちゃんを見た。


「カノン様……」

「……アリア、無理だと思うけど今だけちょっとは賢そうな顔してくれよ!」


 小声で無理難題を突きつけながら、お兄ちゃんはあたしの手を取って高々と天井に突き上げ、声を張り上げて宣言した。


「砦で不死の魔獣を討ったのはこいつだ。こいつの刀には確かに魔石を砕く力がある。オレがこの目でしかと見届けた」


 神官の間でざわめきが広がり、視線があたしに集まる。か、賢そうな顔……? うう、表情筋を引き締めるスキルが欲しい……。目を回しているあたしを睨み、さっきの意地悪な神官が苛立った声を上げる。


「……確かに打倒不死は我々が渇望するもの。しかし所詮刀の力に過ぎぬでしょう、振るう人間に価値があるわけでは……」

「なるほど。じゃああんたが握って戦ってくれるわけだ? 妖刀の類は持ち主を選び、資格の無い者が触れると魂を抜かれるとも聞くが……勇敢で有り難い話だな、貸してやれアリア」

「は!?」

「え? うーん、でも……」


 肩を叩かれ、青い顔の神官と妖刀・螢火とを交互に見る。柄に手をかけてみると、微かに刀身が震えるのが分かって顔をしかめた。めちゃめちゃ怒ってる。


「良くないよお兄ちゃん、こんなに嫌がってる女の子におじさんと無理やり手を繋がせるのは……」

「女の子とかあんのかそいつら……」

「……も、もういい! しかし聖女の予言が正しいと言うならばその少女はどうやってこの世界に忍び込んだと言うのだ? 神の手引きも無しにそんなことが出来るわけないだろう、やはり魔王の息の掛かった……」


 キーキー抗議され、まあそれは確かにと首を捻る。

 聖女さんの予言の信憑性は崩したくないから予定通りの6人召喚説は押し切りたい、けどそれだとあたしがここにいる理由にどう説明をつければ良いんだろう?


 緊張の走る室内の真ん中で、お兄ちゃんは少しも怯まず笑うと、事も無げに言った。


「もちろんノエルの予言は正確だ。勇者は6人。だが神が呼んでないから何だって言うんだ? いるだろうが、ここにもう一人」

「……ん?」

「こいつをこの世界に召喚したのはこのオレだ。だからこいつを追い出すならオレも出て行くし、もしこいつが裏切ったり下手を打つようなことがあればオレが責任を取る」

「あれ!?」


 あ、兄が神を名乗って大嘘吐き始めた──!?

 ていうか責任取るってどうやって?? 裏切りは行動パターンにないけど下手を打つ可能性はかなり高いので勝手なこと言わないで欲しいんだけど!?


「なんと……!」

「ちょっと何言ってんのお兄ちゃん寝言は寝て言っ」


 広がるざわめきの中、ばちん、と虫でも仕留めるように口を手で塞がれてあたしはふがふがともがいた。そんなことは気にせず、お兄ちゃんは涼しげに続ける。


「オレの万能加減は散々こき使ってるあんたらがよく分かってるだろ? 人間一人呼び寄せるくらい、スキルを使えば簡単なことだ。そういうわけで聖女の予言は外れてないし、強力な戦力を無償で得て教会の未来も明るい。何も問題ないよな?」

「…………し、しかし、なぜ敢えてこのような無力そうな少女を? やはりそもそも貴殿が幻術でかどわかされているという可能性もまだ……」

「だーーうるさいな、元から屁理屈をこねて歩み寄るつもりが無いなら話し合いなんか始めるな、そんな悠長なことしてる場合かこの世界は! ……まあオレも色々ごちゃごちゃ言ったけど、こいつがここに居る理由なんか一個で十分だ。それは、」

「……それは……?」


 全員が固唾を飲んで見守る中、お兄ちゃんは堂々と淀みなく言った。


「こいつが! オレの可愛い妹だからだ! 何か文句ある奴は遠慮なく言え、分かり合えるまで話し合おう。まあ紛糾するなら()()()()を使うけど」


 言った直後に室内にもかかわらず神官たちの目の前に雷が落ち、一瞬で場の空気がチーンと静まり返った。か、格好いいこと言ったっぽいけど結局は暴力に訴えた!


 感謝するべきか妹として呆れるべきか悩んでいると、神官たちは苦々しげに歯を食いしばりながら、ドスドスと足音煩く部屋の外へ退散して行った。「似てない兄妹!」という捨て台詞とともに……いや本当にいびりたいだけの性悪聖職者だったな……。


「……お、お兄ちゃん、ありがと……」

「ちょーーー緊張したーー……あんなハッタリ通ると思わんかった、手汗やばい」


 いや、自信なかったんかい。

 はあー、と息を吐いたお兄ちゃんに、思わず吹き出してぺしっと背中を叩いていると。


「カノン様お帰りなさい、助けていただいてありがとうございました!」

「おーノエル、遅くなったせいで嫌な思いさせて悪かったな。つーか近い近い、美少女が無闇に男に抱き着くなっていつも言ってんだろうがいつになったら覚えるんだ?」

「うぅ……無闇じゃないのに~……」


 忠犬のように駆け寄って飛びつこうとした聖女さんのおでこを容赦なく手の平で抑えて、お兄ちゃんはハハハと笑った。


「こ、これは……(フラグ)を折る『スキル』!?」

「アリアちゃんにだけは言われたくないと思うの」


 真剣に考察しているとマヤちゃんの冷ややかなツッコミが刺さり、あたしは何がと首を捻る。

 ともあれそんなこんなで、召喚された6人の勇者+おまけのあたしは、無事教会に集結したのだった。


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