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恋する少女の異世界記録 〜スキルが強すぎてヒロインになれません〜  作者: 花苗カナ
第2章 潮騒と喧騒の港

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(おまけ)違う世界の人


「ああ!!」


 異世界に来て文化の違いに驚くことは多々あれど、それを凌駕する勢いで驚きを与え続けてくれているのは、他ならぬ同じ世界から来たはずのクラスメイトの女の子だった。


 名前は雨宮アリアさん。

 先ほど長い森を抜けて同じ勇者2人と別れしんみりしていたかと思えば、すぐ楽しそうにこれから訪れる港町の海鮮料理について期待を膨らませ、かと思えば今は突然悲鳴を上げて立ち止まり、両手で口を押さえて呆然としている。


 いつもころころと表情が変わるんだけど、こんな顔面蒼白で深刻そうな彼女は初めて見た。きっとよっぽど重大な何かに気づいたに違いない。思わず緊張が走り息を飲む。


「雨宮さん、どうし」

「……たまごっち、リュックの中に入れっぱなしだった……死んでるかも」

「卵……っち……?」


 異国の単語のように呟いて、ああ、あの玩具(おもちゃ)の、と言いかけてやめる。雨宮さんの落ち込みようを見ては、そんな軽薄なことはとても言えない。


 この異世界に来て少し行動を共にしただけでも分かる。彼女が非常に情に厚く、義理堅い性格の女の子であることは疑いようもないことだった。

 たとえデータ上の存在でも育児放棄の結果死に至らしめたとなれば、その自責の念の深さたるや想像に難くない。安易な慰めの言葉は傷口に塩を塗るだけだろう。


 ……とは言え、これは最近気づいたことだけど、どうも雨宮さんが笑っていないとこっちまで調子が狂うらしい。

 あのピザパーティーの日も、本当は一人になりたがってるのが頭では分かってたのに、泣いてる雨宮さんを見たら体が勝手に動いていた。

 胸がざわざわするような、凪いでた思考がぐちゃぐちゃにされるような、ああいう気持ちを何て表現するのが正しいのかは、寡聞にして知らない。


 なんて無能に手をこまねいている間に、雨宮さんは「ん~~~」と何かを振り切るように頭をぶんぶん振って、力強く空を見上げるともう立ち直っていた。


「でも、きっとこういうのあれだよね、尊い犠牲? この死を無駄にしないためにもあたし、頑張らなくちゃいけないんだよね。ヒーローは悲しみを乗り越えて強くなるものだから……」


 ぐっと涙を堪えながら目を伏せた後、今度はハッとした様子でこちらを見て大いに慌て、それから頬を手で押さえて恥ずかしそうに身悶えしていた。忙しそうだな、ジェットコースターみたいで楽しいけど。


「ごめんね、いつもくだらないことで騒いで……」

「いや。僕も興味湧いてきたな、たまごっち」

「え!? 高遠くんが!? わあ、すっっっごくしつけの行き届いた賢い子に育ちそう……!」


 雨宮さんはぱあっと目を輝かせると、「へへ……」と頬を赤らめて、真っ直ぐにこちらを見上げながら言った。


「うれしいな。…………はやく一緒に世界を救って、すてきなママ友になろうね?」


 正直言っている意味はほとんど分からなかったんだけど、気の利いた冗談も言えない自分が雨宮さんを笑顔に出来る機会もそうそうないものなので、つい無責任に笑い返して頷いてしまった。考えたことなかったな、ママ友になる未来。


 元の世界、というか教室では接点が無くて、この異世界に来て初めて喋ったけど、雨宮さんと話していると感心することばかりだ。次にどんな言葉が返ってくるのか想像も付かなくて、そう、こういう気持ちは……


「わくわくするね、次の町。あたし高校生になってから海に行くのって初めて!」

「……わくわく、か」


 あまり馴染みのない言葉が、だけすとんと腑に落ちて、首を捻る。


 別に海に感慨なんて無いのに、それを見たら雨宮さんは今度はどんな顔をするんだろうと、そう思うと不思議と歩幅は大きくなって、らしくないなと笑った。


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