表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

一〇七号室

 ある寒い冬の夜、東京の小さなアパートに住むれいは、一人で夕食を終えた後、ソファで読書をしていた。そのとき、電話が鳴り響いた。珍しいことで、れいは普段、ほとんど電話を受けることがなかった。


 「もしもし?」と電話を取ると、受話器の向こうからかすかな女性の声が聞こえた。「助けて、ここから出られないの。」


 れいは驚いて、「誰ですか?どこにいるの?」と尋ねたが、電話はすぐに切れてしまった。奇妙な電話に不安を感じたれいは、再び本に集中しようとしたが、どうしてもその声が頭から離れなかった。


 翌日、れいは大学でこのことを友人に話した。友達の一人、棚橋は都市伝説や怪談話に詳しく、「それって幽霊からの電話かもしれないね」と半ば冗談で言った。しかし、れいは笑えず、その夜も心のどこかで電話が再び鳴るのではないかと感じていた。


 案の定、深夜になって再び電話が鳴り響いた。「助けて、ここから出られないの」と同じ声が聞こえた。れいは何とかその女性の助けになりたいと思い、「どこにいるの?住所を教えて」と必死に尋ねた。今度は返事があった。「東京都、新宿区…一〇七号室」その瞬間、電話が再び切れた。


 れいは次の日、まさかとは思いつつも新宿区に向かった。教えられた住所は、れいが通う大学からすぐ近くにあるアパートだった。一〇七号室を探し勇気を振り絞りインターホンを押した。そこから現れたのはなんと棚橋だった。「なんでれいがここにいるの?あがっていく?」わけがわからなくなり動揺していたれいは、「いや、大丈夫!また明日ね」とすぐに帰路についた。


 帰宅後、れいはさらに調べるため、過去のニュース記事を検索した。その結果、気になる記事を見つけた。数ヶ月前、れいが通う大学で女性が行方不明になったらしい。とても綺麗な女性だったらしく、誰かに殺されたのではないかという噂もあった。


 「全然知らなかった…でもどうして…」れいは恐怖に震えながらも、「まさかその女性は亡くなって、幽霊になってあそこにいるってこと…?」だとしたら棚橋が危ない。


 次の日の深夜、再び電話がかかってきた。れいは電話に出て冷静にこう言った。「あなたを助けるために何ができるか教えて。」今回も返事があり女性はこう言った。「ありがとう…」そしてすぐに電話が切れた。


 その後、れいのもとにその電話がかかってくることはなかった。おそらく、彼女の言葉が、囚われた魂に安らぎをもたらしたのだろう。棚橋も普段通り大学に通っている。れいは安堵感を覚えつつまたいつも通りの生活に戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとうの直後に これはホラーな素晴らしい胸くそでした 下手打ちまくってるのがもうね 良きですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ