訪問者のイタズラ
日曜日。
翌日を迎えた私は未だに頭痛に悩まされ、起床した。
愛宕智香の侵入を恐れたが、自室に近付いてくる脚音はいつまで経っても聞こえなかった。
頭を抑えながら、ベッドを下り、自室から頭だけを出し、左右を確認して安全が保証されてから廊下に出た私。
「居ない……?やっと落ち着けるの?」
私は呟き、階下のリビングへと下りた。
「ま、ママー居る?ち、智香ー?」
リビングに脚を踏み入れ、二人を呼んだみた私だった。
誰からも返事はなく、静けさが続くだけのリビングだった。
ダイニングテーブルに書き置きが残されていたのに気付き、紙を手に取る。
『職場の人の結婚式に行ってくるね。これくらいあれば、足りるでしょ?お留守番、よろしくね。 ママより』
このような文言が書かれた紙をグチャグチャと握りしめ、ゴミ箱に投げ捨てた私。
私は牛乳に浸したシリアルを食べ、胃に詰めた。
私はダイニングチェアの背もたれに背中を預け、天井を仰ぐ。
「暇だぁ〜……」
愛宕智香は外出している。
ピンポーン、と溜め息を漏らしたタイミングでインターフォンが鳴った。
「こんな時間に誰だぁ?」
私は玄関へと駆けていき、玄関扉を開ける。
玄関前で佇んでいたのは、橘だった。
「おはよー、茂畑さん。ビンゴー。機嫌悪め?」
「え……?橘さん、なんで……?」
「暇だから茂畑さん家を探して、一緒に暇潰そうって……」
「そうじゃなくて……なんで分かったの?」
「大まかなことしか教えてくれんかったから、ウチの友人の情報と合わせて探したら、見っけた。暇っしょ、茂畑さん遊ぼ〜!」
「あぁー……うん。暇は暇だけど……遊べるのなんて無いよ、橘さん」
「そぅ?此処じゃなんだし、上がって良い?」
「それはそうだね。うん、上がって」
「ありがと〜!お邪魔しまぁ〜す」
私は橘と向き合いダイニングテーブルを挟んで座った。
「茂畑さんの匂いはそんなしないね。愛宕さんの匂い、これが?ふぅ〜ん……これはこれでなんか良い。ゲームは無いの、茂畑さん?」
「あぁ、うん……そんなゲームに興味ってなくて。えっと……さっきからそれが気になるんだけど?」
私は橘が足もとに置いた紙袋に視線を向け、訊ねた。
「あ〜これ?服だよ、茂畑さんに着てもらうやつ。コスプレだねぇ……瀬楽が茂畑さんと楽しめたなんて言ってたから、着てほしいのを持ってきたんだ〜!」
「こ、コスプレ?へ、変なやつじゃないよね、それって?」
「変なやつ……?コスプレを貶してる、茂畑さん?」
「え?ちぃっ、違くて……だからぁっそのっ、露出が多いかっていう——」
私は橘に鋭い目付きを向けられ、誤解を解こうとする。
「茂畑さんがコスプレを批判してるかと思っちゃった、ごめんごめん!茂畑さんはそんな娘じゃないよね、つい熱くなっちゃった……そんな心配要らないよ、私しか居ないんだし恥ずかしいことなんてないから」
「あぁー……そうなんだ。サイズ、合わないかもしれないし……」
「サイズね、合うと思うけど……もしもがあるし、一度着てみてよ茂畑さん」
「は、はあぁ……」
私は橘が紙袋から取り出したコスプレ衣装の一着——バニーガールの衣装を渋々着た。
私は恥ずかしさのあまり、橘を涙眼で睨んだ。
「うっひょ〜!思い描いてた通りの茂畑さんのキュートなバニーガールちゃ〜んだぁ〜〜ッッッ!はぁはぁはぁはぁ……はみ出た茂畑さんのお尻ぃ、すべすべで弾力性もあって、手触りぃ〜最高だよぅ!あぁ〜んんっっ!」
「お尻ぃ……触んないでぇ、橘さん……うぅっうゔぅっ、お願いぃだぁからぁっ……やめてぇよぉぅ〜」
橘にエロオヤジらしい手付きでベタベタとお尻を触られ、泣くことしか出来なかった私だった。
私は肌の露出度が高い衣装ばかり着せられ、橘に満足するまで触られ続け、精神的にズタズタになった。