表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

そんなの、嫌!

「もっとそばに来てよ、お義姉ちゃん。家族になったんだよ、私たち……」

 ベッドの上で両脚を伸ばし、腰から僅かに離した位置で両腕をつき、上半身を支える体勢の義妹——愛宕智香(あたごちか)が、ベッドに上がってくるように促してきた。

 「良いよ、私は別に。あの、さ……愛宕さん、その呼び方はちょっと嫌なんだけど」

 私は、愛宕が呼んだ呼び方に低い声で不満を感じたと正直に返答する。

「えー、なんでそんな嫌そうなの。お義姉ちゃんって呼ばれるくらいなんも生じないじゃん……学校じゃないんだし。地味な女子に馴れ馴れしくされるのが嫌なの、茂畑さんって?」

「別にそういうんじゃ……なくて。愛宕さんって、ほんと別人みたい……学校じゃあんま他人と親しげにしてるとこ見ないのに」

「私みたいな底辺の地味なのが、お義姉ちゃんみたいなカーストの一軍に近づけるわけないでしょ。それに私たちが家族になった日に言ったでしょ、私が茂畑さんを好きだったって。パパが茂畑さんのお母さんと偶然再婚してくれたから、こんな幸せに恵まれたの!」

 彼女の昂揚感に、怖気づく茂畑千尋だった。

 

 私は、母親の茂畑美智子(もばたみちこ)が再婚相手を紹介したいと告げられ、その日に再婚相手の愛宕孝彦(あたごたかひこ)と連れてきた娘の智香の二人と顔合わせをした。

 顔合わせを済ませた日に、愛宕親娘が帰宅せずにアパートに一泊して、就寝前に彼女から私に対し好意を抱いていたことを告げられ、胸を揉まれた。

 愛宕は、高校一年生だった去年はクラスメイトでクラスが一緒だったが、会話と呼べる会話は交わさなかった。

 今年は違うクラスであり、彼女とはクラスメイトではない。

 

 私は、モスグリーンのラグの上で脚を崩し座ったままで、彼女が寛ぐベッドに近づけなかった。

「私にそういう趣味はないから……」

「お義姉ちゃんの胸を揉んだのは承諾を得られたからで、無理やりじゃなかったはずなのに。警戒し過ぎでしょ、胸を揉まれたくらいで……」

「たとえ女子でも胸を揉まれることは嫌だし。喜んでるふうに見えた、愛宕さん?」

「嫌がってたっていう割に、喘いでた記憶があるけど……私には。男子の一人や二人に胸を揉ませてるふうに見えるんだけど、お義姉ちゃんって?」

「私はそんな交際(あそび)なんてしてないっての!ギャルみたいな女子が全員遊んでるような偏見はやめてくんない、愛宕さんッ!」

 私は声を荒げ、彼女の偏見を否定した。

「私はそこまで言ってないよ。まぁ……ごめんなさい。お義姉ちゃんの嫌がることしないから、そばに来るだけ来てよ」

 私は、仕方なく彼女の命令に従い、立ち上がりベッドに歩いていき、ベッドの縁に腰掛けた。


 7月13日の火曜日の放課後。

 愛宕智香の自室のベッドの上で、彼女の指示に従う茂畑千尋だった。

 室内は、エアコンの冷房が効いているはずなのに、身体中が火照るように熱く感じる私だった。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ