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ケンタウル祭の夜

原作のザネリの出番これで全部終わり。


どうでもいいことではあるけれど、「らっこの上着」をChatGPTは何故か高い確率で「アライグマの上着」と書いてくるんだ。…そのうち「シマリスの上着」とか変換するんじゃないかと思ったけどそんな事はなかった。何でらっこの上着をアライグマの上着と変換して表記するのかは全くわからない。

 ザネリは心躍るケンタウル祭の夜、今日こそは素直になってジョバンニと一緒に楽しもうと心に誓っていた。


「ああ、待ちに待ったケンタウル祭の夜だ!ジョバンニを烏瓜ながしに誘おう…。今日こそは勇気を出して話しかけなきゃ!彼の笑顔を見たいんだもん。」

 ザネリは新しいえりの尖ったシャツを身にまとい、暗い小路の向こうから街燈の下へ歩いてきた。運命だろうか、通りとの合流点でジョバンニとばったり遭遇する。ぶつかりそうになって慌ててひらりとかわすザネリ。言わないと、誘わないと。

「ジョバ…」

「ザネリ」

 ジョバンニとザネリの声が重なる。言わないと。

「烏瓜ながし」

 何で?何でジョバンニが先に言っちゃうの?

「…ンニ、お父さんかららっこの上着がくるよ」

 違う、そんな事を言いたかったんじゃない。今思い切って話しかけようとしたのに、先に言われちゃうから。そんなの予定と違う。彼の声が聞こえるたびに、胸がきゅっと締め付けられる。冷静でいられなくなる。

「何だって、ザネリ!」

 彼らしくない大きな声が聞こえてくる。怒ってるのかもしれない。なんで私はジョバンニにあんなことを言ってしまったんだろう。彼は何も悪くないのに、なんで私は彼に対して意地悪な事を言ってしまうんだろう?何で彼を避けてしまうんだろう。ジョバンニが何もしていないのに、私があんなひどいことを言ってしまうのは、きっと私が馬鹿だからなんだろうな。


 ジョバンニは思う。ザネリは何でいつもああなんだろうと。嘲笑だったとしてもザネリの笑顔はあんなにも可愛いのに。もし君と仲良くなれたら、どんなに素敵だろうと思うのに。勇気を持って話しかけたけど、結局いつも通りだ。ザネリは一体僕の何が気に入らないんだろうか。君は一体いつも何を考えているんだろう。

ああ、もう一度ジョバンニと会いたかったのに…。でも、みんなの前では恥ずかしくて、いつも通りに意地悪なことを言ってしまった。なぜ私はあんなにも臆病なのだろう?ジョバンニに話しかける勇気が持てない自分が嫌だ。そして、ジョバンニは去っていってしまった。一瞬、追いかけたくなったけれど、みんなの前で追いかけ続けることもできず、ただ見送るだけ。もどかしい気持ちでいっぱいだ。


────

 ジョバンニ!?また会えるなんて。さっきの事を謝りたいけど、みんなの前では無理だ。

 駆けてきたジョバンニは「川に行くの?」と誰に言うでもなく問いかける。烏瓜ながしに誘いたい。そうだ、誘おう!

「ジョバンニ…らっこの上着が来るよ」…そうじゃない。烏瓜…

「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ」え?何でみんなで言うの?それだと私が号令したみたいだ。また失敗しちゃった、

 違う!勇気を出そう。……あ。

 ジョバンニは顔を赤くして急いで先へと行ってしまった。

 カムパネルラはジョバンニの親友じゃないの?何で助けてあげないんだろう?ただ私たちの方を見つめてただけ?

 …追いかけよう。

「は、走らないでよザネリ、夜は危ないよ、もし川に落ちたらどうするんだい?」

 離して。ジョバンニが行っちゃう。でも、気弱な私に言えるわけがない。そうか、私は女丈夫なんかじゃない。気弱なんだ、ジョバンニが気になるのは私に似てるからだ。

 いた、ジョバンニだ。川の方向じゃない。

 私はみんなの人気者でもリーダーでもない。ただ裕福な家の生まれだから持ち上げられてるだけだ。孤独な私を助けてくれるのはジョバンニしかいない気がする。


 ジョバンニも誰か声をかけてくれないか、カムパネルラが声をかけてくれないだろうかと振り返る。けれど、カムパネルラは皆と話に興じている。こちらを見ているのはよりによってザネリだけだ。まだ僕を追い詰めたいのだろうか。

 僕は弱い。また駆け足で逃げ出してしまう。


 ザネリはケンタウル祭の夜、ジョバンニに話しかけたいと思っていた、勇気を出そうと思っていた。なあのに結局いつも通りに意地悪なことを言ってしまった。そして、去っていくジョバンニを見送るだけで、追いかけることもできなかった。

「やっぱりダメだった…。いつも通りになってしまった。ジョバンニに話しかける勇気がなくて、結局は意地悪なことを言ってしまった。なんでこんなにも臆病なんだろう。」


────

 烏瓜ながし…か。結局ジョバンニは誘えなかったな。

 アレはりんどうの花かな?何か気になる。ジョバンニは花をもらって喜んでくれるだろうか?それでも、あのりんどうの花は手に入れたい。どうしようか。どうしようかじゃない、舟を動かすしかないよね。ちょうどいい、あの“烏うりのあかり”を追いやるフリでもしようか。それならきっとみんなのザネリ像通りのはずだ。

 自分でも。文章へっただなーと思う。

 ただ、ザネリはやっぱり弱い女の子なんだと思うんだ。

 ジョバンニの親友のカムパネルラはそれを理解している。カムパネルラはザネリを妹のように見ていたのではないかなと思う次第です。


 宮沢賢治は一言で言うとシスコンで、妹を投影したキャラがとにかく多い。そしてその名前に多く使われるのが「ネリ」。カムパネルラ=宮沢賢治とする説が多いので、するとザネリはそういう位置づけになるのだろうと。だからジョバンニとザネリの互いの感情は恋愛感情とは違うものかなと。

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