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2話 異世界転移 その2

「近くの街、フィオーレタウンと呼ばれる場所にて調査をしてきました。分かったことをご報告いたします、亮太様」


「ああ、頼むよ、マリア」


 調査を終えた俺の側近の一人であるマリアは冷静な口調で話し出した。


「まずは言語からですが、どうやら問題なく通じるようです」


「そうだったか。それはつまり、この周辺は少なくとも日本語でいけるということか?」


「話す分には日本語そのままのイントネーションで使っても問題なかったです。ですが、文字については今まで見たことのない文字が使われていました」


「マジで?」


「はい、マジです」


 マリアは冷静に言ってのけていた。話す言葉は普通に通じるのに、使われている文字は日本語などとは異なる。まさに不可思議な現象だ。まあ、不可思議な現象と言えば、ゲームで自分が作った部下と一緒に異世界へ飛ばされている時点でおかしいんだけど。


「ていうことはこの屋敷から出てその街に行くなら、文字は最低でも学ばないといけないのか……面倒なことになったな」


 言葉が通じるとは言っても、街中では字が書けないと宿にも泊まれないだろうしな。


「学ぶ必要はあると思いますが、比較的日本語に近い文字列のようですので、そこまで習得に時間はかからないと思います」


「そうなのか、まあ簡単ならいいんだけど」


「亮太様みたいな天才だったら簡単に覚えられますよきっと! 私も頑張りますから!」


 そんな時に元気よく声をあげたのはレミラだった。彼女は手をピンの伸ばしながら発言していた。


「そう褒めてくれるのは嬉しいが……」


 逆にプレッシャーになってしまうな。レミラもマリアもおそらく俺のことを誤解している。俺はやり込んでいたゲームキャラに転生? したのだろうからステータスや技なんかは確かに強いだろう。しかし、頭の回転は高校1年生の須藤亮太でしかないわけで……


VRMMORPG「ディザスターストーリー」内の戦術ややり込みに関する知識は豊富でも根本の知能は並以下なんだよな……。とりあえず今は隠しているけど。


「文字の習得に関しましては亮太様なら問題ないと思われます。それから……」


 ああ……やっぱりマリアも俺のことを誤解しているようだ。


「それから、冒険者活動が普通に行われているようです」


「マジで?」


「マジです」


 マリアは即答した。ディザスターストーリー中でも冒険者活動は全てのプレイヤーの基本の仕事の1つだった。それが行われているということは……俺は思わず席から立ってしまう。


「フィオーレタウンの冒険者ギルドしか調査できませんでしたが、冒険者になりたいと申し出て色々と話を聞くことができました」


「へえ……凄いなそれは」


 マリアの姿はロングスカートのメイド服だ。ゲームの中ならその格好の冒険者が居ても不思議ではなかったが、この世界では流石に不自然だろう。とりあえず冒険者には見えないしなりたい人物にも見えない。


 それでも教えてくれたのは単純にマリアが美人だからだろうな。紫のロングストレートに鋭い眼光、外見年齢17歳程度の少女はこの世界でも十分に通用するようだ。


「依頼はボードに張り付けてあるのが基本のようです。それから国家任務や特別任務というものもあって、これらは普通では受けることができないようです」


「ディザスターの時と似ているな。緊急クエストみたいなものだろ」


「おそらく間違っていないかと」


 いわゆるあれだ、依頼をこなして信頼を得たり冒険者ランクが上がるとギルドの方から話を持ち掛けて来るんだろう。単純に難しいものや、依頼主が貴族や王室だったりしそうだけどな。


「基本的には誰でも冒険者になれるようですが、最初はFランクからのようです」


「Fランクっていうと……EDCBって上がっていくのかな?」


「そうですね。Aランクの上はSとSSランクがあるようですが、概ね、冒険者ランクは8段階からなるようです」


「なるほどなるほど……ディザスターの時は冒険者ランクはA~Dの4段階評価だったからな。大分違っているな」



「さようですね」


 分かり切っていたけれど、全く別の世界に飛ばされたことは確実なようだ。フィオーレタウンに情報収集に行ってもらっただけですぐに確信できたことは大きい。



「ねね、亮太様。この後はどうするんですか?」


「どうって……俺達がどうするのかってことだよな?」


「そうです、そうです」



 レミラはマリアの話を聞いて陽気な態度で俺に質問してきた。この後の展開を楽しみにしているのだろう。レミラはマリアに比べて子供っぽいというか、テンションが高い性格をしているからな。


「そうだな……ま、この世界のお金を持っているわけではないし、稼ぐ為にも冒険者になるのが手っ取り早いと思うな。ただ……」


 昨日はとりあえず、屋敷の周りにいた動物を捕まえて食べたわけだけど……いつまでもそれで生活するのはどうかと思うし、金を稼ぐことは絶対に必要になる。その為に、マリアに街への調査をお願いしたわけだ。


 しかし、1つ懸念点があり……。


「俺やマリア、レミラの力が通用するのかどうか、昨日は野生動物を捕まえたけど、冒険者として通用するかは分からないからな」


「確かにその通りですね」


 昨日はマリアが留守にしている間に俺とレミラで野生動物を捕まえた。そこそこ素早さの高そうな獣を捕らえたので、ある程度は通用するかと思っているが。少なくとも一般人レベルということはないだろうが、俺達の剣撃が冒険者の間で通用するのか……そこは慎重に確かめる必要があった。


 レミラの片手剣、マリアの双剣、そして俺の両手大剣。ディザスターストーリーでは俺が単独で剣王と呼ばれ、3人合わせて「剣王三重士」と呼ばれ有名になっていた。


実際には俺と比べた場合、部下であるレミラとマリアの能力はかなり劣るが、普通プレイヤーの間では彼女達も化け物に見えていたらしい。まあ、その辺りの細かい点はともかく、要は俺達の力が通用すれば問題ないわけだ。


「剣技も普通に撃てていましたし、大丈夫ですよきっと! この世界でも覇権を取る勢いで行きましょう! ね、マリア!」


「ふふ、そうね、レミラ」


 レミラの問いかけにマリアは冷静な笑みを浮かべていた。冷静ではあったが、マリアも乗り気なようだ。ディザスター内では俺は確かにトップクラスの実力ではあったけれど、彼女達のように手放しの自信を持つことは出来なかった。まあ、二人はプレイヤーではなくNPCだから考えが違って当然だが。それもこの世界に飛んで来てからは完全な人間になっているようだな。ああ、この場合、完全な魔族か。


「よし、明日にはフィオーレタウンに出発しようか」


「りょうか~~い! 亮太様!」


「畏まりました」


 レミラもマリアも元気よく返事をしてくれた。色々と不安は残っているけど、まずは行動あるのみだな。俺だけじゃなく、二人が一緒に居てくれたのは非常に助かった。ゲームでの能力を有した状態だったとしても、一人だと本当に不安になるしな。


 まあ、全ては明日からだ。無事に冒険者になれるように頑張ろう。

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