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装甲騎士アルマティス 〜希望と絶望のアースニア〜  作者: Koropika
【第一章】レイトルニア帝国騎士編
8/18

2人の名前は

 ──レイトルニア帝国暦339年

 マーテェルナビス4号機、レイトフォーツ研究所。

 ここはマーテェルナビス船団の中でも最高峰の技術力を誇る施設であり、様々な軍事技術の研究開発が行われている場所だ。その最新鋭の研究施設の中枢部に位置する場所には、厳重な警備が敷かれた部屋がある。そこで1人の女性が何重にもロックされた分厚い扉の前で佇んでいた。


「はぁ~全く私が視察しに来たって言うのに誰も迎えてくれないなんて、どうかしてるんじゃない?」

 愚痴をこぼしながら彼女は扉の横にある端末をに近づき、首から下げていたペンダントをかざした。

 すると次々に重厚な扉が左右に開いた。

 そうして彼女は堂々と中に入っていった。


 中には様々な機器が置かれており、その奥に1人の研究員らしき白衣に身を包んだ男性がホログラムを見ながら作業していた。

 女性はその研究員の後ろへと歩み寄り声をかける。

「研究の方は進んでるの?」


「れ、レイリー・レグフォーツ様、どうしてここに!?それと研究と言ってもどの事を言っているのかわかりません!」

 突然の言葉に驚きつつ、少し困った顔をしながら返答をする。


「決まってるじゃない、【エクセラー】についてよ。」

 レイリーは少し怒ったような表情で研究員へ詰め寄っていく。しかし動じる事なく言葉を返した。


「勿論順調です、奇跡的にエクスマターを適合させる事ができた2人は元気に成長していますよ、施設の一部を破壊するくらいに……」

【エクセラー】それは7年前、惑星アースニアから発見された万能物質エクスマターを人間に適合させる事で特殊な能力と高い身体能力を身につけた人工生命体である。


「それは中々扱い辛くて大変ね」

 それを聞いたレイリーは呆れたように答える。そして研究員の隣に立ち見ているホログラムの映像を覗き込んだ。

 そこには少年と少女の姿、それに加えて名前と年齢などが事細かく映し出されていた。

 Codeneme【Ars028】

 Gender【male】

 Age【6 years old】

(白銀色の髪に紫色の瞳)


 Codeneme【Ars082】

 Gender【female】

 Age【5years old】

(白銀色の髪に水色の瞳)


「ただ、片方はちょっと問題と言うか……」


「問題?戦闘において何かしらの問題があるならそれは多分欠陥品ね、即刻処分すればいいじゃない、別に代わりはいくらでも作れるのでしょう?」


「それは簡単な命令に従うだけの人形だけです。ですがそれは高度な戦闘ではまるで役に立ちません。今必要なのは、同調アルマティスを扱えるエクセラー。それは子として生まれ、経験を積み重ねる事で人間と同じ様に成長していきます。そして彼が初めてアルマティスとの高い適正を持ちあわせ、エクスマターを自己生成し、扱える最初の存在なのです。おいそれとは処分する事は出来ません。それに……いや、何でも無いです」


「そう。」

 何処か必死さの感じられる口調で長々と語った研究員だったが、レイリーは特に興味も無い様で、最後に言おうとした事に対しても特に気に止めることはなかった。


「レイリー様、あまり興味が無い様ですね?」

 研究員の言葉に彼女は少しだけムッとした顔をしたのち口を開く。


「そんな事ないわよ。私はただ優秀なアルマティスの騎士(操縦者)を育ててくれればそれでいいのよ。成果を上げる事で私たちはこの帝国内で高い発言力と権力を保有できている事を忘れないでよね?」


「はい、レグフォーツの名かけて必ず優秀なアルマティスの騎士にして見せますよ」

 レイリーの威圧的な言葉にも臆することなく自信満々な表情で答えた。


「ふーん、まあ良いわ、それなら私もその子達に一回会ってみたいのだけれど」


「残念ながら今は会えません。もうすぐしたら訓練を始める予定なのです」


「そう。じゃあ私はこれで失礼するわ、また来るわね」

 少々残念そうな表情をしたのちレイリーは身を翻すとその場を後にしようとした。

 その時、突如として大きな音が聞こえてくる。その音は徐々に近づいてきているように思えた。

「何の音かしら?」

 レイリーは不思議そうな顔を浮かべた。


 直後、(ドン!ガシャーン)という音共に通路の自動ドアが木っ端微塵に砕け散った。

 

「はぁ、折角修理したばかりなのに……」

 研究員はその光景を見て大きなため息をついた。


 そこから一人の少年が見た目に似合わない凄まじい速度で走ってきた。

 後を追うように、少女が少年の後を追いかける。


「……兄さん待ってよ」


「いやだねー!」

 呼び止めようとする少女に対して少年はそう答えるも、顔には無邪気な笑顔を浮かべていた。

 そして、2人の前で立ち止まると元気よく挨拶した。


「こんにちは!...お姉さん誰?」

 少年は元気に挨拶するも初めてみた見知らぬ人物に戸惑い、可愛げに首を傾げる。

 しかしレイリーは何も言わず、ただ黙ったまま少年を見つめていた。


「また抜け出して来たのか全く」

 研究員はため息混じりにそう言って頭を抱えた。


「そうだよ!訓練なんてしたくないからねっ……うわぁ!」

 少年が得意げに話すも途中で打ち切られる。何故なら少年は同じ年位の少女に首根っこを掴まれたからだ。そしてそのままズルズルと引き摺られていく。


「捕まえた…」


「離せよ!」

 首根っこを掴まれたまま、少女へと振り向き怒りの目を向け言い放った。


「はあ、はあ、よく捕まえたな」

 遅れて息切れしながら軍服姿の男性が走って来て膝の上に手を置き息を整えながらそう言った。


「いや、立ち止まってたから……」

 少女は軍服姿の男性へ目を向けると、囁く様に言った。


「よし、二人とも戻るぞ」


「はい。」

 軍服姿の男性は2人に声をかけると少女の方は素直に応じる、しかし少年は駄々をこねた。


「嫌だ、嫌だ!」

 それを見ていた研究員は再びため息をつく。

 レイリーはと言うと、二人を微笑ましい笑顔を浮かべ見守っていた。


「兄さんこれは命令」

 少女がそう言うと、途端に少年は大人しくなり俯いてしまった。


「こい!」

 軍服姿の男性が少年の腕を掴み強引に引っ張り、もと来た通路を歩き始める、その後ろをトコトコと少女がついて行った。


「待ちなさい!」

「貴方は!?レイリー・レグフォーツ様!先程の御無礼をお許しください。」

 その人物を見た途端、一瞬戸惑うも、直ぐに正体に気づき少年の腕を掴んだまま深く頭をさげた。


「良いわ、それよりその子の手を離しなさい」

 少年の腕を掴む男性の手を見つつ命令した。


「はい」

 掴んでいた少年の腕を放した。


「二人とも名前はなんて言うの?」

 レイリーはその場でしゃがみ込み、2人の子供と目線の高さを合わせて優しそうな声で尋ねる。


 すると、少年が口を開いた。

「なまえ?こーどねーむならあるよ、僕はえーあーるえすのぜろさんはち、そしてこっちが、妹のぜろはちさんだよ」


(うん)

 隣にいる少女が小さく頷く。


 辿々しく答えた少年、それに頷いた少女を交互に見るとレイリーは眉をひそめ、考え込むような仕草をする。

 そして、少しして何かを思いついたように口を開く。


「貴方達、今日からそのコードネームを名乗るのを辞めなさい。私が名前を考えてあげるわ」


「「ええ!!」」

 レイリーの提案に研究員と軍服姿の男性が驚きの声を上げる、一方で少年と少女二人はキョトンとした表情を見せた。

 その様子を気にする事なくレイリーは続ける。


「そうね……Ars038と083…………貴方がアレス、妹はスレア、そして苗字に二人ともレグフォーツを名乗りなさい」

 レイリーは二人の頭に手を置くと、優しく撫で始めた。

 すると今まで無表情だった少女の顔がほんのりと赤くなり、照れ臭そうに下を向いてしまった。

 一方少年は、

「アレス、アレス」

 新しく付けられた自分の名前を静かに呟くと、目をキラキラさせ純朴な笑顔を浮かべて、

「お姉さんありがとう!」

 と言った。

 それに続いてスレアと名付けられた少女も静かに、

「……ありがとう」

 と囁いた。


「ふふっ、これからはちゃんと訓練を受けて立派なアルマティスの騎士になるのよ?」

 レイリーは満足気に笑い、優しく2人を抱きしめた。


「分かったよお姉さん。ボク頑張るね!」

 アレス、そう名付けられた少年は力強く返事を返した。

 一方、スレアと名付けられた少女の方は恥ずかしそうにしながら小さくコクっとだけ首を縦に振った。


「すみませんがレイリー・レグフォーツ様そろそろ失礼させて頂きます。さあ、戻るぞ」

 軍服姿の男性は申し訳なさそうにそう告げ、頭を下げた。


「はい」

 渋々と言った感じでアレスが短く返事をする、しかしながら口元には笑みを浮かべていた。

 そうして3人はその場を後にしたのだった。


「番号全く関係無いですね」

 研究員がそうポツリと漏らすと、レイリーが鋭い目つきで睨んだ。


「何か言ったかしら?」

 あからさまに不機嫌な表情で研究員を問い詰めると、慌てて誤魔化す様に言葉を続けた。


「いえいえ、何でも無いです。それより急にどうしたんですか?貴方様が名付けを行い、しかも苗にレグフォーツを名乗ることを許すなんて」


「ただの気まぐれよ。名前、そして苗字にレグフォーツを名乗ればあの子達が将来他人に蔑まれることは無いでしょう。

 それと、さっき言った事は撤回するわ、たとえ作られた存在であろうとも、私にはあの子達がただの人形には見えないわ。あれはもう人間そのものじゃない」

 レイリーは3人が去っていた方向を見つめながら静かに話す。

 研究員は黙って彼女の言葉に耳を傾けていた。


 暫く沈黙が続いたのち研究員が口を開いた。

「そうですね。しかし人間では無いのもまた事実、余り深入りしない方が良いですよ」


「それはどういう意味かしら?」

 レイリーの問いに対し、研究員は少し間を空けてから口を開く。

「奇跡的に適合させる事が出きたエクスマターは彼らに強力な力を与え、エクセラーを前提とした現在開発中の新型アルマティスをいずれ扱える様になるでしょう。しかしながらその力は身を蝕む、おそらくですが寿命は短く長く生きる事はできないのです」


「それ、本気で言ってるの?」


「はい、しかし人類未来のためにこの犠牲は仕方のない事なのです。あの子達与えられた使命は重く、よってあの2人は苦悩の人生を送る事となるでしょう」

 研究員は目を背けつつも、悩ましい表情で嘆いた。


「そう、私はこれで失礼するわ。」

 レイリーは静かに立ち去っていった。

 研究員はそんな彼女をただただ見守る様に見送った、その瞳はどこか悲しげに見えたのだった。


 ーーーーー


 ──5年後。訓練場に金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。


「そこまでだ!」

 軍服姿の男性が大声で叫んだ。

 それと同時に剣を打ち合っていた2機のアルマティスは距離を取り動きを止めた。

 機体のハッチが開くと中から姿を現わす。一人は少年、もう一人は少女、2人は同じ白銀色の髪をしていた。

 一見血の繋がった兄妹にも見えるだろう。

 しかし目の色は異なり、少年はアメジストの様な紫、少女の方は氷の様に透き通るアイスブルーの瞳をしていた。

 2人はまだ、あどけなさが残る顔立ちをしていながらも、すっかり大人びたアレスとスレアだった。

ようやく本編に入る事が出来て作者は一安心しました……。

次回からは主人公の1人称視点でストーリーを進めていこうと思います。

小説初心者が初めて書く作品ですが是非最後まで宜しくお願いいたします。

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