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第六話 自称龍神刀クリカラーン

 アーノンが病室から出るのを見届けた後、カムイの動向について考える。ちなみに、ここは村の中にある医療所で、回復魔法や医療知識のある医者が夫婦でやってる程度の場所だ。竜人は基本的に頑丈だから軽い手当てで怪我など治ってしまうからだ。


「そういえばあいつが変わったのは三年前か」


 三年前、カムイの恋人であった少女が何者かに殺された……らしい。らしい、というのはこの件に関しては箝口令が敷かれており、口に出すのを禁じられているのだ。それは元村長であるガレリア爺さんの指示だった。


 集落の出身ではなく、アラヒト国という人族が中心となって形成されている国で知り合ったんだとか。俺も一度だけ挨拶をしたことがある。色素の薄いブロンドの髪が、金髪のカムイとお似合いだなと思ったものだ。大人しそうなイメージだったが、意外にもカムイが尻に敷かれていたとか。


「あの事件以降、カムイは旅に出ることが多くなったが……何かそれと関係あるのか」


 箝口令を敷いたガレリア爺さんに恨みでもあったのか?でもそれにしては、家の中での爺さんとカムイの関係は悪かった様には見えなかった。


 他には……事件の黒幕が爺さんと繋がりがあった可能性。拉致が開かないな、家に戻ったらカムイの部屋と爺さんの部屋を少し探ってみるか。


『……のう……』


「仮にも十六年育ててくれた家族だ。あんな風に爺さんを殺されて黙ってる訳にはいかねえ」


『のうってば!!』


「っ!なんだ!?」


ガタガタっと、ベッドに立てかけていた錆びた刀が震え出した。


「やはり呪われた刀だったか。気色悪いから破壊しておくか」


『そ、それは冗談じゃろう?私はお主の恩人じゃぞ?』


「俺の身体を貫けるくらいだからある程度の強度はあるのか?カムイの雷魔法付与で切れ味が上がっていた可能性が高いから、刀そのものの強度はあまり高くないか」


 氷漬けにして粉砕する方向でいくか。氷魔法の魔法陣を手元に発生させ、それを錆びた刀へと向ける。この世界の魔法は基本的に魔法陣が発生する。そのサイズや複雑さは魔法によって異なり、得意な魔法になればなるほど魔法陣は簡略化、発生させる必要すらもなくなる。


 今回は魔力消費を抑える意味も込め、魔法陣をどでかく描いた。


『や、やめてたも!さすがにその魔法を使われると刀そのものが粉々になってしまうわい!ちょっと!聞いてる!?聞こえてるよね?あれ?どんどん冷たく……はっ、やめてぇええ!』


「っち、うるさい刀だな。抵抗値でも高く設定されてるのか?破壊寸前になるとわざわざテレパシーで命乞いするとは。作った人の趣味を疑うぜ」


 先程からキンキンと刀から大きな声が頭に響き渡っているのだ。こういった呪いの武器は早々に破壊するに限る。


『お、落ち着くのじゃ、レイボルト=ボロス。異世界の御魂を持つ者、龍の力を持つ者よ!』


 異世界の御魂……?

俺が転生してきたって事を知っているのか。


「ふむ、こいつはたしかに呪われているな。破壊するしかない。破壊されたくなければ、洗いざらい吐いてもらうしかない」


『わかった!わかったからその棒読みやめるのじゃ!壊したい気持ちの方が勝ってるようにしか聞こえん!』


 本当にうるさい刀だな。マジでぶっ壊しておいた方がいいんじゃないだろうか。俺が転生してきた事を知ってるということは何か俺の弱みを握っているのかもしれないし。


『ごほん。えー、私は龍神クリカラーンという。訳あってこの刀に御魂を封じられた……いや、一体化しておるのじゃ』


「で?俺にどうしろと」


『は、話が早いのじゃ……うむ、私を刀から解放しろ!などは言わん。今の時代、神は現世うつしよに干渉できぬようになっておるからの』


 先ほどまで動転していたくせにクリカラーンは何故だか上機嫌に話し始める。うん、お調子者だってことはよく分かった。あまり調子にのるようなら鉄拳制裁が必要なタイプだな。


「神は現存するのか?」


『するのじゃ。信仰する者が存在する限り、だかのう。私の場合はお主らボロスの家系の末裔だけしか信仰者がいないから、ほとんど天に召されかけじゃがのう!』


 ケラケラと笑っている龍神であるが、本当に天に召してやろうか。


「じゃあ俺たちの一家が途絶えたら終わりってことなんだな」


『まあそれはなんとも言えんな。こうやって刀に魂を封じ込められ、一体となっているからの』


「話が脱線してきた。お前を刀から解放するのじゃないなら何が目的だ?俺に近くからには何かあるんだろ」


 まあ協力してやるとは一言も言ってないがな。龍神とはいえ、何かメリットが無いとな。


『くっくっく、私をお主の旅に同行させるのじゃ!メリットはこの刀、龍神刀クリカラーンとしてお主の力になってやろう!』


 ……絶対なんか裏あるだろこのサビ刀は。


 こうして何故か龍神の刀と共に俺は旅をすることとなったのだった。

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