第三話 龍神殿
【竜神殿】
「ハァッ……やけに遠く感じたな」
かなりスピードを出して神殿へ急いだはずだが、意外と距離があり魔力と体力を少し消費してしまった。
神殿は石造りでできており、内部の祭壇には定期的に食べ物などが供えられている。祭りの日にここを使ってみんなで騒ぐくらいにしか有用性は無いと思っていたが、まさかこの下に龍人族の秘密があるとは……
「っ!?おい、しっかりしろ!」
神殿に近づくと警備を担当する二人の男が気を失って倒れていた。目立った外傷はないが、首元に網目状の火傷がある。
これは雷属性特有の火傷跡だ。
おそらく電気ショックのようなもので気絶させられたのだろう。
心拍に問題は無いようなので、そのままにして神殿へと入っていく。竜人は基本ステータスが高い、放っておいても死にはしない。この辺りでは魔獣や魔物も出ないしな。
神殿内は薄暗く、外からの光と、灯火だけが内部を照らしている。
建物としては少し大きめで、入り口から見て正面の奥に祭壇があるのだが……
「……趣味の悪いところに隠し階段がありやがる」
やはり誰かが地下へと向ったのだろう。
地下への隠し階段が現れていた。
それも祭壇のど真ん中に。
「ここ竜神が供えられた食べ物食べるって場所だし、初めて降臨したところとか言われてんじゃねえのかよ」
祭祀のやつらが知ったらひっくり返るだろうな。竜神はカモフラージュで、そいつが降臨したと言われる場所が本命の地下につながる扉だったとは。
「ま、竜神自体はもしかしたらいるかもしれないがな」
階段をゆっくり降りていく。真っ暗な為、得意では無いが火属性魔法を使い、足元を照らしながら歩いていく。ま、ほんの少しの明かりがあれば龍人の目はよく見える。
種族特性の龍眼ってやつだな。
その龍眼は、想定しうる最悪な光景を映し出していた。