第二話 龍人の一家
異様に家が静かだ。
基本的には誰かが家にいるはずで、母さんは家事、親父はまあ村長として村の運営をやっているから家にはいないが……爺さんもいないのは不自然すぎる。
俺とカムイ兄さん、両親、元村長である祖父、その五人暮らしなのだが、隠居生活を楽しんでる爺さんまで家にいないのか?
それに兄さんの事もある。
俺の能力阻害は転生時に与えられたもので、外から分かるようなものではないはず。
そもそも能力阻害というのは、この世界での能力、つまりはスキルや魔法の成長速度を遅めるというものだ。竜人は基本ステータスが高いので、そのせいもあり俺は周囲から遅れを取っていた。成長阻害の事を思い出すまでは周りとの差に不安を感じていた時期もある。落ち込んでいた少年時代、そんな俺に対して兄さんは決まっていつも……
兄さんの言葉を思い出しかけたその時、
「机に何か刻まれてる?」
リビングにある木製の机。そこには大きく何か文字が焼き付けられているのを発見した。
そこには、
「『我、覇龍を成す者』」
覇龍……俺の記憶ではこの言葉を使う人物は一人しか知らない。
「『レイは必ず覇龍を成し遂げるさ。そう、必ずね』」
その時は覇龍という意味は分からなかったが、龍人族である事を知った今は分かる。その答えは竜神殿にあるはずだ。
「竜神殿の地下には龍人だけが入れる秘密の部屋がある、最近聞いたところじゃねえか!」
成竜式の後、親父に聞かされた秘密だ。その神殿には龍神が祀られていて、竜神殿をカモフラージュに信奉されているのだという。
「龍人が全員いない……ということは、神殿の地下か!」
神殿は村の外れだ。今日は休日であるため、神殿の警備も少し手薄。何かそこで起こすなら絶好の日だ。
家を飛び出し、急いで神殿へと走っていく。
魔力も使い身体強化をかけ、猛スピードだ。
「あの文字……おそらくだが……くそっ!」
文字はおそらく雷属性の魔力で書き込まれていた。
単純に指先に魔力を纏わせ、焼き付けるように書き込んだだけだと思うが、そういった繊細な使い方できる人物はこの村にはそう何人もいない。
「兄さん……!」
間違いであってくれ、そう信じながら神殿へと駆けてゆく。