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第三十話 魔帝


 剣と槍のぶつかり合いによる衝撃を氷の翼で防ぐ。


「ちっ……いってえなあ」


 『氷花槍十景』は俺の使える中でも最高ランクの魔法だぞ。それを食らってこの程度のダメージか。


 ガスティールは左腕に一撃を受けた様で、少し血を流している程度。


 俺の方と剣が一本飛んできていたので、なんとか翼で防御していたが一枚持っていかれた。


「……ガスティール。アーティファクトの解析完了。用途に合わない使い方をしていたから、回収しても意味はない」


「んだと?わざわざ来といてそれかよ……」


「おい、逃げるのか?」


 少女の声を聞いたガスティールは太刀を消すと、少女の方へと近づいていく。


「……てめぇの顔は覚えたぞ。次あったら容赦しねえ」


「レイボルト=ボロスだ、覚えとくといい。ちなみにお前が見たという龍人は金髪か?」


「ふん。答える義理はねえ……が、そうだな、面白そうだから教えといてやる。そいつは金髪の龍人で、化け物みてえな強さだった。それこそ遺跡の番人であるカースドラゴンも一撃で殺すほどのな」


 やつがなぜ龍人のことを知っているかは分からないが、おそらくカムイのことを指しているのだろう。


 

 俺のことを一瞥した奴は、取り出した杖を振るとその場から消えてしまっていた。


『あれもアーティファクトじゃの。登録先へ瞬間移動ができる。魔力のチャージは必要だがな』


 こうして、これから何度も戦うこととなるガスティールとの戦いは引き分けに終わったのだった。



ーー

【魔帝城】


 アーノンとレオナが加わっている潜入部隊と、アイリス率いる部隊は既に魔帝城の中心部へと進行を成功していた。


 アイリスが知る城の秘密の抜け道と、イースによる警備の誘導が成功したからである。イースは魔帝国皇子として、奴隷市場等の裏稼業も担当させられており、そこへレイボルト達の襲撃の報告があった。魔帝城の警備を無理に動かし、奴隷市場への応援に向かわせたのだ。


「ここが魔帝の間……」


「びびってんの、アーノン」


「……いや、大丈夫。レイが本気で怒ったときの方が怖いから」


「いつも機嫌悪そうだけどそれよりってこと?」


「あれがレイの普通で、キレたら容赦なくなる。普段はわりと優しいじゃないか」


「……たしかに。何だかんだ言いながらも面倒見いいしね」


 アーノン達は潜入部隊の後方。基本戦闘は元近衛兵達が担当し、城の内部事情も詳しい。


 そしてついに魔帝の間の扉が開かれた。


「では、お二人とも、お気をつけて」


「うん、アイリスもね」


「任せたわよ」


ーー


 魔帝の間は、奥に玉座がありそこに魔帝が鎮座していた。部屋に光がさしているが、ガラスが曇っているからか薄暗い雰囲気だ。


「来たか。遂にこの日が」


「……なんか様子がおかしいわよ」


 玉座に座るリスカロン魔帝は膨大な魔力を放っているが、その方向性がかなりバラけている。


「魔帝国をコワス「させるか」」

「コノ世は醜い。神の時代ヲ「既に神の時代は終わった!これからは人の時代だ……なぜそれが」ウルサイ」


 まるで自問自答だ。

魔力の質もランダムに入れ替わっているようで、不安定。


「おそらく洗脳によって作られた人格の様なものと、本来の魔帝の人格が争っているのよ」


 レオナは武器である弓を構え、戦闘準備に入る。

玉座の周りには現近衛兵だけでなく、実験により改造された魔獣達が控えている。



「邪魔スル者は皆殺しに「そうはさせん。私は私達の息子が止めてくれる筈だ」」




「そうですよ、父上。後はボク達に任せてください」


 広間の中央に魔法陣が現れた、そこに立っていたのは皇族の証である衣装を着た美少年。少女と見間違いそうなほど整った顔に、桃色に染め上げた髪がトレードマークの皇子。


「さあ、父上に乗り移るし怨霊よ。魔帝国次期皇帝が相手になろう」


「小賢しい小僧メが」


 その一言と共に洗脳された魔帝とイース皇子達の戦いが始まった。



 開戦の合図はレオナによる弓の一撃。風魔法を付与した矢は空を切り、魔帝の側に控えていた魔獣の腹に風穴を開けた。


「イース様に続け!近衛兵共を抑えるぞ!」


 元近衛兵の男たちは現近衛兵を、


「じゃあ俺は魔獣だな!」


 大剣を握るアーノンは魔獣へと攻撃を開始する。


 元魔法士団からも二人加勢を得ており、レオナも含めて後方支援となる。


「はぁっ!」


 アーノンの振る大剣が熊型の魔獣へと斬りつけられる。もはや叩き斬るの部類に入るが、大型魔獣と闘うには非常に有効だ。


 熊型の魔獣はルークベアという魔獣を改造したもので、体長は2メートル程。背が高いアーノンを上回る巨体だ。


 他にも蛇型や牛、蜘蛛、鳥型など多種多様な魔獣が広間に集結していた。


「少し数が多いわね……広範囲攻撃は?」


「中級程度ですが可能です!」


「だったら、中級で広範囲攻撃を続けて!細かいのは私が落としていくから!」


 アーノンと熊の魔獣ルークベアとの闘いに介入せんとする鳥型の魔獣をレオナの弓が撃ち落とす。広範囲攻撃も可能だが、やはり威力が落ちるため魔法士団の二人に援護してもらいつつ各個撃破を狙う。


「爆ぜろ……『竜衝』!」


 大剣をルークベアに叩きつけると、大剣が爆発し、ルークベアを衝撃が襲う。大剣を改造した特殊仕様だ。


「まだまだぁっ!『竜炎』!」


 足下を爆発させ、空中に飛び上がったアーノンによる切り落とし。大剣に竜の炎がまとわりつき、敵を燃やし尽くさんと襲い掛かる。


「ガァアアッ!!!」


「よっし」


 爆発音と共に魔獣の頭が吹き飛んだ。返り血すらも消し飛ばす豪炎は、そのまま大剣にまとわりついたままだ。


「次!」


 足下に攻撃を繰り出してした猪型の魔獣を斬り払い、口から吐いた炎をぶつける。ルークファングを改造した魔獣であろうが、本気を出しているアーノンにとってはポーンポークとさほど変わらない。


「ギシャアッ!」


「うおっ!?」


 死角から襲いかかるは蛇の魔獣。ビショップスネークを細くし、しなやかな動きを強化した魔獣のようだ。スネークは器用にアーノンの腕に絡みつき、噛みつこうと大きく顎を開く。


「『疾く穿つ矢(ゾズマ)』!」


 ビショップスネークの頭に目にも止まらぬ速さで矢が突き刺さる。そのするとスネークの体を風が包み込み、吹き飛ばしながら粉々に弾けた。

 

「レオナ、助かった!」


「まだまだいるから気をつけて!」


 レオナが手に持つ弓は普段の物とは異なっている。アーティファクトであるアイテムボックスから取り出していたのは、獣の毛皮で覆われた弓。普通の弓よりも大振りの作りで、そこから放たれる矢は強烈で、魔獣を次々と各個撃破していく。


 『星穿ちの弓』と呼ばれるレオナ専用武器である。

聖なる木を素材とし、とある幻獣の毛皮を使い鍛え上げられた最高級の一品。


 部分獣化する事で腕の筋力を増強しなければ使いこなせないが、その威力は非常に高い。


 アーノンとレオナの舞台は次々と魔帝の側近達を打ち倒していく。


ーー


「……やっと鎮まったか。魔帝というのは中々にしぶとい」


「そりゃ真祖の力をコントロールできるからね」


 銀のナイフを手に、イースは魔帝へと襲いかかる。

魔神によって洗脳されたであろう人格が既に支配しており、先程までのような混乱した様子はない。


 逆手にナイフを二つ、イースの攻撃が繰り出される。彼はアサシンとしての適性があり、非常に高い身体能力を生かした戦い方をする。


「ほ、ほう。なかなかやるではないか」


「化けの皮が剥がれてきてるよ、魔神さんっ」


 超高速移動を繰り返しながら切りつけていく。

風属性魔法を発動し、風の刃を放つ。


「ち、ちぃっ!」


 魔帝の持つ剣に魔力が込められると、闇が魔帝を覆い風の刃を弾き飛ばす。


「後ろがガラ空きだ」


 銀色のナイフが魔帝の肩へと突き刺さっていた。

それは聖女の祝福を受け、吸血鬼の弱点である銀を素材とするナイフ。


 気配遮断と高速移動、幻術を併用したイースの得意技。


「がぁっ!?はや……すぎる……!?」


「やっぱり真祖の力を引き出せていないね。このくらいなら普通に避けられると思ってたけど」


「調子に、ノルナァァアッ!」


 ナイフを抜き取り、さらに黒い闇が魔帝を覆う。その隙間からは真っ赤な血が溢れ、広間の床を赤く染めていく。


「そうそう。真祖の力っていうのはそうやって使わないとね」


 笑みを浮かべたイースは、白銀の髪と真っ赤な瞳で魔帝の変化を見ていた。


「ここからが本当の殺し合いだ」


 真祖と真祖の殺し合いが始まったのだった。

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