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第十四話 アーティファクト『アイテムボックス』

 レオナ=レザーノというライオン系獣人女子を運び屋として雇い、俺たちは近くの森へとやって来ていた。


 ギルドの情報ではこの森ではルークファングが数多く生息し、こうして定期的に間引く事でルークファングだらけになることを防いでいるのだという。


「ちなみにルークファングは料理しても美味しいわよ」


「どんな料理?」


「ローストポークっていう名前ね」


 適当に話をしながら森の奥へと進んでいく。レオナは聖獣国という獣人国の出身で、流れの冒険者として世界を旅して回っているのだとか。


「じゃあ俺達はルークファングを狩ってくるけど、ここで待機してもらうぞ」


「一人でも大丈夫かい?」


「ええ、この森じゃファングくらいまでしか強い魔物はいないから。近づく魔物がいたら弓を使って追い払うわ」


 レオナの方は問題なさそうなので俺達は二手に分かれてファングを探し始める。一々歩いて探し回るのも面倒なので、背中に氷の翼を作り出し、風魔法で一気に空中へと飛び上がる。上空から龍眼を使ってルークファングの群れを見つけるのだ。


「ふむ、たしかにかなり数が多いな」


『のう、もしかして今回私の出番無しかの?』


「当たり前だ。これ以上レベル上がらないのに使う意味もないだろ。無理に使って破壊されたらどうする」


『そうじゃがのう〜暇なのじゃ〜」


「じゃあファングの肉でも食ってろ」


 ファングの群れを発見し、龍神刀に氷魔法で刀身を補助し、群れの一頭へとぶん投げる。それに追随するように滑空し、ファングの群れへと突っ込んだ。


 ちなみに横目で見た程度だが、アーノンも似たような方法でファングの群れを探していた。


 ザクリという音を立てて龍神刀はファングの脳天を貫き一撃で絶命させる。他のファングが動き出すよりも前に龍神刀を引き抜き、さらに一匹の体を斬りつける。血を吹き出す程度には切り込むことが出来たが、絶命させる程ではない。氷の刃も砕けてしまった。


「やっぱり龍神刀自体を強化しないと使い物にならねえな」


『じゃろ?だからさっさと魔の聖水を探すのじゃ』


 偉そうに言うがな、面倒な素材を指定してきたのはお前なんだからな?


 龍神刀を片手に、魔法を発動。ダメージを負っているファングを地面から氷を突き出し、比較的柔らかい腹の部分を貫いた。


「残り八匹か……なかなかタフだし面倒だな」


 ポーンポークは一瞬で氷漬けが可能だったが、ルークファングは対魔力もそこそこに高く、身体の作りも頑丈。サイズはポーンポークと近いが群れとしての統率も取れているので、次々と攻撃を仕掛けてくる。


「じゃあちょっと本気でいくか。『氷雪槍』」


 空中に作り出されたのは氷の槍。ランスの形をイメージしており、一つ一つの重量はかなりのモノである。


 それを一気に投げつけ、次々とファングの腹に大きな風穴を開けていく。龍神刀に纏わせた氷の刃は強度を高めすぎると龍神刀を破壊する可能性があるが、この氷雪槍は問題ない、多くの魔力を練り込んである、岩をも易々と貫くランスだ。


「ラスト一匹か」


 おそらくこの群れのボスなのだろう。他の個体よりもサイズが一回り大きい。こういった小さな群れがいくつもこの森にはいるみたいだ。


 ブモォッと鼻息荒く俺の方へと巨大な牙で貫こうと突進してくる。魔力を纏っているため、身体強化を施した突進だ。直撃は避けたいところだな。


「身体強化……よし」


 突進してくるルークファングを軽く避け、小さな氷塊をぶつけ、近くの木へ誘導しぶつけさせる。猪突猛進、あまり周りが見えてないようだな。


 まあ魔獣なんてのは本能で動くのが普通だ。頭を使った闘い方は上位クラスじゃないとできない。


「『氷雪槍』」


 四本の氷の槍をルークファングに突き刺した。細めにサイズを変更してあるので、風穴を開けるでなく、串刺しという形で仕留めた。


『さすがじゃの〜魔法も下級魔法であの威力とは』


「大したことじゃない。何匹食う?」


『とりあえずは一匹じゃの!』


 討伐の証にルークファングの右牙を切り落としていき、一匹の死体に龍神刀を突き刺す。するとその死体がフッと消え去り、龍神刀が取り込んだ。


 単純に趣味の食事だという。キャパシティが決まっているため、収納などには使えず、取り出すこともできない。しかも食べ物限定。あまり使い道がないんだよな。


 残りの牙も手元に作り出した氷のナイフで切り取っていき、死体を一箇所へ集める。


「レオナのとこへと運ぶか」


 氷の小さな荷車を作り出し、その上にルークファングを山積みにしていく。ルークファングの死体を放置するのもいいのだが、俺達は勿体無いので売り払う事にしている。冒険者ランクが上がれば報酬も増えるからその辺りに埋めるようになると思うが。


 ファングを積んだ荷車は少し重たいが身体強化と生まれついての龍人の身体能力で何とか運ぶことができた。


ーー


「あら、早かったわね。十匹……もう指定の数を狩りきったの?」


「ああ。ん?アーノンも戻ってたのか」


「うん。でも八匹しかいなかったんだよな。だからちょっと早く戻ってきてた」


 アーノンが狩ったのであろうルークファングが地面に置かれている。丸焼きになっていたり、首がへし折られていたりと、わりと凄惨な状況だ。


 縄が括られており、引きずってここまで持ってきたのであろう。さすがは馬鹿力だな。


「とりあえず十八匹か……」


「私も三匹狩ったわよ。なんか襲ってきたし」


 近くの木に縫い止められているルークファングを指差すレオナ。弓矢でルークファングを突き刺すとはなかなかの腕前だな。


「風魔法で弓矢を強化してるのか。かなりの遠距離でも威力を保てるようだな」


「そ、本職は冒険者で遠距離担当だもの」


「じゃあ運び屋の方はどんな技を見せてくれるんだ?」


「それはね……これよ!」


 パッと取り出したのは小さな袋。

一見みすぼらしい小さな布の小袋だが、よく見れば分かる、こいつは魔道具だ。


「まさかアーティファクト?」


 アーノンが近づいて袋の中を覗こうとする。


「生き物は入れられないけどね。獲物はこうやって収納できるのよっと」


 袋の入り口をルークファングの死体に向けると、次々と小袋の中へと吸い込まれていった。


「凄いな……これがアイテムボックス」


「そ、これなら簡単に運び屋ができるのよ。まあ運び屋は副業みたいなものだけど」


「ほぉ〜こりゃ報酬も弾まないとな!」


 アーノンが珍しいものを見たからかテンション高めに言う。一応パーティの資金は俺が管理する事になってるんだけどな……


「いえ、報酬はけっこうよ。その代わりと言ってはなんだけれど……」


 アイテムボックスにルークファングを収納し終わったレオナは俺達に問いかけた。


「私を貴方達のパーティに入れてくれないかしら?」


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