第十二話 冒険者登録と龍神刀錬成……できるのか
旅の目的についてアーノンに話し終えた後、俺達は冒険者登録の為にギルドを訪れていた。ポーンの街は周辺の森でも低級魔物しか出ないことから初級冒険者の街とも言われている。
俺がこの街を最初に選んだのも、初心者が冒険者になりやすい、初期装備を集めやすい、物価が安いことが理由である。かわりにレア度の高い素材や、手の込んだ料理などにはありつけないが。
ちなみに魔帝国の特産料理はマカリーという黒色のカレーだ。黒いスープカレーのような見た目で、味もほとんどカレーに近い。ただ、具材には魔物の肉が使われており、香辛料を使った料理であるが臭みが取れていない。魔帝国の人口の大半を魔人が占めており、彼らは濃い目の味が好きなのである。
「よし、冒険者登録もすんなり終わったな」
「受付の人が、レイのことを竜人と認識しなかったのが面白かったけどな」
『そりゃ私の加護あるからの。眼鏡を外したり龍眼を使えば分かってしまうが』
冒険者登録には特に時間はかからなかった。身分証明書もあるし、初めて登録する者は全員Dランクからのスタート。種族の登録時に、アーノンは鱗を見せれば竜人だと理解してもらえたが、俺の場合は鱗はほとんど言っていいほど無いため、龍眼(普通の人には竜眼との違いが分からない)を見せて納得してもらえた。種族登録は竜人ということにしてある。
龍人は絶滅してるというのが世間の認識であり、龍神国アルロスの滅亡理由からも変な注目を受けるのは得策では無い。
「にしても鱗が薄いって知ってたけどまさかここまでとはなー」
「最終的には人間社会に溶け込みたいからな。鱗と眼しか外的要素で違いはないし、鱗は昔からペリペリ剥がしてたのさ」
「そんなので薄くなるもんなの?」
「まあ薄くなったんだからそうなんじゃないか?」
鱗があれば防御力は高まるが、それを無理に獲得する必要はない。肉体戦闘には今まで力を入れてこなかったからな。龍神刀を使う必要もあるから今後は考えを改める必要があるが……
「じゃあ俺は錬成に必要な素材を見に行くけど、アーノンはどうする?」
「武器とか防具見てくる!素手でも良いんだけど返り血が鬱陶しいんだよな」
「了解。何かあったら小さい火玉を打ち上げれば位置は分かる」
「おう!」
アーノンは武器屋の多くある通りへ、俺は素材関連が置いてある商店街の方へと歩いていく。
『はっやく錬成っ、錬成っ』
龍神刀クリカラーンの錬成には素材が必要であり、それらを集めて刀に吸収、進化させるのだという。
ちなみに森を抜ける際にポーンポークを5体倒したのだが、龍神刀のレベルは6で上限だったらしい、ふざけんなという話だ。
錬成に必要な素材は、
鉄鉱石、炭、魔の聖水の三つ。
鉄鉱石と炭は割と廉価で、手持ちの資金でも簡単に購入することができた。しかし、魔の聖水というよく分からない名前の素材に関しては薬屋などにも置いていなかった。
店主に尋ねてみたところ、魔の聖水というのは魔人族の聖女が作り出す聖水の事らしい。魔人族の聖女なんてのがこの世界には存在するんだな。
「まあ錆びた龍神刀なんていうポンコツがあるからあり得るか」
『龍神刀だからといって錆びないとでも思ったか?』
うるせーぞ、一発目の錬成くらい簡単な素材にしとけよ。
とりあえず宿へと戻る事にしたのだった。